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第3回 百日咳
漢方で百日咳の咳嗽を1週間以内に止める!

2021/09/21
松田 正(みさとファミリークリニック院長)

 現在、百日咳の咳嗽を止める治療法として確立されているものは、世界的に見ても皆無です。西洋薬の気管支拡張薬、去痰薬、中枢性鎮咳薬(コデインリン酸塩など)などは無効です。カタル期のマクロライド系抗菌薬の投与がほぼ唯一の治療法ですが、咳が出始めてからの抗菌薬投与は、他者への感染予防にはなっても、患者本人の咳を止めることはできません。

 現在使用されている百日咳ワクチンの効果減弱によって、百日咳は先進国においても再興感染症となっており、0歳児にとってはいまだに致死的疾患であることに留意が必要です。当院の研究では、百日咳は決して特殊な珍しい疾患ではなく、コモンディジーズといえるレベルで流行していることが判明しています(関連記事:発熱外来の受診患者、最も多いのは百日咳!)。

 当院では、百日咳抗体IgM(M抗体)と百日咳抗体IgA(A抗体)を用いて百日咳を早期診断し、早期治療に結び付けています。その際に使用する漢方薬が竹筎温胆湯(ちくじょうんたんとう)で、必要に応じて麦門冬湯(ばくもんどうとう)を併用します。漢方薬治療によって、発症1週間以内であれば1週間で、発症10日を超えた場合でも2週間以内には、百日咳の咳嗽を止めることが可能です。

 なお、百日咳は聴診上の著変がないため、咳の鑑別診断には呼吸機能検査を行います。東北大学教授の黒澤一氏らが開発した(強制)オシレーション法のモストグラフや、呼気一酸化窒素濃度測定器が有用で、これらはいずれも重宝している呼吸機能検査です。「開業医の必須アイテムは漢方薬とモストグラフ」というのが私の持論です。

著者プロフィール

松田 正(みさとファミリークリニック[埼玉県三郷市]院長)●まつだ ただし氏。1987年日本大学医学部卒。1991年日本大学大学院医学研究科博士課程修了。1990~92年にかけて米国アイオワ大学心臓血管研究所に留学。日本大学医学部内科学兼任講師を経て、2006年にみさとファミリークリニックを開業。もともと漢方薬は全く使用していなかったが、大野修嗣氏(元日本東洋医学会副会長)との出会いから、漢方の可能性に目覚める。大野氏に師事しながら、頭痛をはじめ内科・小児科領域の様々な疾患に対して漢方薬による治療を実践している。

連載の紹介

松田正の「急性疾患にこそ漢方薬を!」
「漢方薬は急性疾患にこそ有用!」という松田氏が、漢方薬の効果を速やかに引き出す「タイミングと用量のコツ」を交えながら、明日の急性期診療にすぐに役立つ漢方薬の使い方を紹介します。ぜひ読者の先生方にも試していただき、ご感想やより良い使い方のご提案をお待ちしています。

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