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淋菌だと思ったら、髄膜炎菌だった?

2020/12/14

 感染症科の仕事をしていると、いろんな相談を受けます。虫に刺された、虫が口から出た、お尻から虫が出た……。思わぬ病原体が思わぬところから検出されることがあります。今回は、そんな話から始めさせていただこうと思います。

 「尿道炎の分泌物からグラム陰性双球菌が検出されたので、淋菌だと思ったら、髄膜炎菌だったんですけど……」。昼下がりに細菌検査室に流れるなんとも微妙な空気。しばしの沈黙の後、「同定間違いでは?」とつい口から出てしまいました。髄膜炎菌が……と言われた瞬間に、電撃性紫斑病、髄膜炎、保健所に連絡、接触者、予防内服、大学の寮でのアウトブレイク、死亡率40%──などの用語が脳内にランダムに飛び交います。尿道炎からグラム陰性球菌だと、淋菌でしょ普通(淋菌であって欲しい)。

 Google先生にお伺いする(検索する)と、髄膜炎菌は、肛門・生殖器から分離されることもあり、尿道炎・子宮頚管炎・直腸炎を起こすことがある、とあっさり書かれていました。日本でも、男性同性愛者間での感染例が報告されています(IASR Vol. 34 p. 370-1: 2013年12月号)。咽頭で保菌していた髄膜炎菌が、オーラルセックスで獲得されるのではないかと推定されているとのことです。己の不勉強を恥じました。逆に淋菌の髄膜炎は? と思って調べてみるとこちらは「まれ」だそうです。播種性淋菌症では血行性に播種し軟部組織に病変を形成することが知られていますが、中枢神経への親和性はそれほど高くないんでしょうね。

著者プロフィール

横田恭子(香川県立中央病院)●よこたきょうこ氏。1998年香川医大卒。その後、内科研修を行い、2003年から聖路加国際病院、国立国際医療センターで感染症科研修を行う。2006年から2008年まで英国の大学院で臨床微生物学、疫学、熱帯医学を学ぶ。その後、聖路加国際病院、香川大学を経て、現在は香川県立中央病院部長。

連載の紹介

Dr.横田の「感染症見聞録」
麻疹や風疹、梅毒やインフルエンザ等々、感染症は今も医療の中心テーマであることに変わりありません。コンサルテーションを中心に活動している感染症専門医の横田恭子先生に、「楽しく、そして為になる感染症の話題」を世界中からピックアップし、正しい知識を得るためのきっかけをお話しいただきます。

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