
長らく議論されている、……というかたまに呼吸器内科同士の世間話として挙がる話題に「気管支鏡後の抗菌薬」というものがあります。口腔内の雑菌などを末梢気道に押し込むわけですから、免疫不全の患者さんの場合、それが肺炎のリスクになる可能性も当然あります。しかし、気管支鏡検査後に肺炎で困ることなんてそうそうありません。その日の夜に発熱を来すことはよくありますが、菌血症による発熱というよりも、しんどい検査でいろいろサイトカインが出ちゃって……という状況が多いのも事実です。
日本国内では48施設4942人という大規模なJ-BRONCHO試験1)がよく知られており、予防的抗菌薬投与は気管支鏡検査後の抗菌薬治療の必要性リスクや続発性感染症のリスクを減らすことはできませんでした(傾向スコアでマッチさせたコホートとの比較で、それぞれのオッズ比は0.79[95%信頼区間0.49-1.27]、1.02[95%信頼区間0.59-1.77])。また、抗菌薬治療群で有意に下痢が多いことが示されました。これによって、気管支鏡検査に際して抗菌薬をルーチンに投与する意義はほぼついえたと思われていたのですが、なぜかこれはまだ論文化されていません。