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切っても切れない肥満と肺血栓塞栓症の関係
Respiratory Investigation誌から

2019/04/22
倉原優(近畿中央呼吸器センター)

 当院にもたまにウォークインで肺血栓塞栓症の患者さんが来られますが、肥満深部静脈血栓症を有する女性が多い印象です。救急外来で胸痛を訴えて搬送されるケースもありますが、意外にケロっとしている人が増えたなぁと最近思っています。軽症で同定される患者さんが増えたからかもしれません。

 今日紹介する論文は、Respiratory Investigation誌に掲載された「肥満は肺塞栓の高い有病率と強力かつ独立して関連している(Obesity is strongly and independently associated with a higher prevalence of pulmonary embolism.)」(Movahed MR, et al. Respir Investig. 2019 Feb 12. pii: S2212-5345(18)30282-X. doi: 10.1016/j.resinv.2019.01.003. )です。この雑誌、日本呼吸器学会の英文雑誌ということもあって多くが日本人著者なのですが、最近外国人の投稿も増えてきたようで、うれしい限りです。

 さて、肥満はあらゆる心血管系疾患のリスクと関連しているといってよく、うっ血性心不全、高血圧、2型糖尿病のリスク因子であることは有名です1)、2)。最近はグルメな人が増えたのか、学会なんかでもちょっぴりメタボなドクターが増えた印象です。私も毎日腹筋しているのですが、一向に痩せません。

 この研究は、全国入院データベースからICD-9コードを用いて肥満と肺血栓塞栓症を抽出したものです。10年空けて2つの年度でその合併を調べたもので、ランダムに選ばれたのは1992年と2002年でした。

 さて、1992年のデータベースには9万3568人の肥満患者さんが同定されました。肺血栓塞栓症は肥満患者さんの0.7%に見られ、非肥満のコントロール群では0.3%という結果でした(オッズ比2.32、95%信頼区間2.2~2.4、P<0.0001)。予想通り、肥満群の方に肺血栓塞栓症の患者さんが多いですね。また、2002年のデータベースには合計29万9010人の肥満患者さんが含まれました。こちらのデータベースでは肺血栓塞栓症は肥満患者さんの0.9%に見られ、非肥満のコントロール群では0.4%でした(オッズ比2.36、95%信頼区間2.19~2.41、P<0.0001)(図1)。

図1 1992年と2002年の肥満と肺血栓塞栓症の頻度(文献より引用)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」を基に『ねころんで読める呼吸のすべて』(2015年)、『咳のみかた、考えかた』(2017年)などの書籍を刊行している。

連載の紹介

Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器 内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。

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