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COPDにSABAの頓用処方は妥当か?
Respiratory Investigation誌から

2019/03/25
倉原優(近畿中央呼吸器センター)

 軽症COPDに対して、吸入短時間作用性β2刺激薬(SABA)や吸入短時間作用性抗コリン薬(SAMA)を使用すると息切れを軽減できることが示されています。しかし個人的には、COPDの患者さんには吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を処方することが多く、喘息とは違って頓用のSABAやSAMAを処方する頻度は低いです。その理由は、長期管理薬と発作時治療薬の2種類の使い分けが、COPD患者さんでは難しいと思っているからです。

 理解の良い50~60歳代ならともかく、70歳以上のCOPD患者さんに対して吸入方法が異なるSABAやSAMAを処方するのはためらわれます。また喘息発作のようにCOPDの症状が大きく増悪してくると感じることは少ないと思います。

 実は、海外ではSABAとSAMAの合剤がレスピマット(薬剤をゆっくりと噴霧できるベーリンガーインゲルハイム社の吸入デバイス)で販売されており、LAMAであるチオトロピウム(商品名スピリーバ)を同じレスピマットで吸いながら、しんどいときにSABA/SAMAを吸うという手法があります。同じデバイスなので使いやすいですよね。しかし日本の場合、SABAやSAMAは吸入タイミングが難しい加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)であることが多く、高齢者にはハードルが高い。それでも、SABAを処方することで突発的な息切れを軽減できる可能性はあります。

 今日紹介する論文は、日本呼吸器学会の英文誌であるRespiratory Investigation誌に掲載された「短時間作用性β2刺激薬吸入の補助的使用と、日常行動における患者ごとの制約に基づくガイダンスの組み合わせ:日本人COPD患者の身体活動性に与える影響(Combination of assist use of short-acting beta-2 agonists inhalation and guidance based on patient-specific restrictions in daily behavior: Impact on physical activity of Japanese patients with chronic obstructive pulmonary disease)」( Hirano T, et al. Respiratory Investigation. 2019 Jan 3. pii: S2212-5345(18)30108-4.)です。

 この研究は、SABAを補助的に用いることでCOPD患者さんの身体活動性を改善させることができるかどうかを見たものです。SABAはプロカテロール(商品名メプチン他)が用いられました。

 和歌山医科大学病院の外来COPD患者さん14人が登録されました。全患者ともに長時間作用性気管支拡張薬が処方されており、過去3カ月間に増悪歴のない男性です(女性はゼロ)。GOLD1期の患者さんはおらず、2期9人、3期4人、4期1人という構成です。平均年齢は72.1±1.5歳で、平均BMIは21.8±0.6kg/m2でした。

図1 試験デザイン(文献より引用)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」を基に『ねころんで読める呼吸のすべて』(2015年)、『咳のみかた、考えかた』(2017年)などの書籍を刊行している。

連載の紹介

Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器 内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。

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