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胸腔鏡下手術時の胸膜癒着剤:ポビドンヨード vs ミノサイクリン
Journal of Thoracic Diseaseより

2019/01/14
倉原優(近畿中央呼吸器センター)

 胸腔鏡下手術における胸膜癒着剤散布に関するエビデンスが増えてきました。日本からは50%ブドウ糖液の有用性1)が報告されており(過去記事:気胸手術時の50%ブドウ糖液注入による再発予防策)、いずれ海外で主流になっているミノサイクリンタルクなどの胸膜癒着剤とガチンコ比較されると予想しています。

 さて、ポビドンヨードを生理食塩水で薄めて胸膜癒着剤として用いるというアイデアがあります2)。粘膜障害性がありそうで何となく抵抗がありますが、昔は傷口に対してガンガン使われていたこともありますから、そこまでひどい起炎症性はないとも考えられます。

 今回紹介する論文は、Journal of Thoracic Diseaseに掲載された「原発性自然気胸に対する胸腔鏡下手術でブレブを切除する際の追加的胸膜癒着剤であるミノサイクリンとポビドンヨードの比較:傾向スコアマッチ解析
(Comparison of additional minocycline versus iodopovidone pleurodesis during video-assisted thoracoscopic bleb resection for primary spontaneous pneumothorax: a propensity score-matched analysis.)
」(Lee KH, et al. J Thorac Dis. 2018;10:5443-5448.)です。

 できればここに50%ブドウ糖液も比較対照として加えてほしかったのですが、海外では50%ブドウ糖液の有用性はまだ知れ渡っていません

※SNSの知り合いである英国人呼吸器内科医に聞いてみましたが、「マジで!?」と言っていました。

 これは、原発性自然気胸に対する胸腔鏡下手術(ブラ切除)に際して、ポビドンヨードあるいはミノサイクリンを胸腔内に注入する効果と安全性を検証した後ろ向き研究です。

 胸腔鏡下手術を受けた332人のうち、299人が原発性自然気胸と診断され、傾向スコアマッチによりポビドンヨード群94人、ミノサイクリン群94人が最終的に比較されました。年齢中央値は20歳で、“ザ・自然気胸”という集団を見ています。ポビドンヨード群は、2mLの10%ポビドンヨードに生理食塩水48mLを混ぜたものを、ミノサイクリン群は150mgのミノサイクリンを、胸腔内に注入しました。

 発熱、胸水持続、術後ベッドサイドでの胸膜癒着術の再実施、合併症による再入院を含む周術期アウトカムについては2群間で有意差はありませんでした。しかしながら、術後2日間のドレナージ量、胸腔ドレーン挿入期間、入院期間については、ミノサイクリンの方が短いという結果でした(表1)。

表1 ポビドンヨードとミノサイクリンによる胸膜癒着術の比較(文献より改変引用)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」を基に『ねころんで読める呼吸のすべて』(2015年)、『咳のみかた、考えかた』(2017年)などの書籍を刊行している。

連載の紹介

Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器 内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。

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