日経メディカルのロゴ画像

COPD患者に対するデキサメタゾンは高山病を予防できない
CHEST誌から

2018/09/24
倉原優(近畿中央胸部疾患センター)

 高山病予防には、一般的にアセタゾラミド(商品名ダイアモックス)が用いられます。急性高山病予防に関する治療必要数(NNT:number needed to treat)は1ケタ台なので、かなり有効な薬剤だと考えられます1)。一方で、ステロイドであるデキサメタゾン(商品名デカドロン)も、高山病予防のために併用されることがあります。

 さて、最近当院でもCOPDの患者さんが「登山をしたい」ということが増えてきました。登山をしている人がCOPDになったのか、はたまたそういう運動療法がブームなのか。

 今回の論文は、CHEST誌に掲載された「COPD患者における急性高山病のデキサメタゾン予防の効果(Efficacy of Dexamethasone in Preventing Acute Mountain Sickness in COPD Patients: Randomized Trial.)」(Michael Furian, et al. Chest. 2018 Jul 9. pii: S0012-3692(18)30922-X. doi: 10.1016/j.chest.2018.06.006. [Epub ahead of print])です。

 COPD患者さんは、標高の高い所へ旅行すると急性高山病およびその他の高度関連障害を起こしやすいとされています。健常人の急性高山病予防に有効な薬剤は、COPD患者さんにおいても同様に有効かもしれません。

 これは、高度800m未満のビシュケク(キルギス共和国)という地域でGOLD分類1~2期のCOPD患者さんに対して、登山前日から標高3100mの滞在2日間の期間、デキサメタゾン(8mg/日)あるいはプラセボを投与したプラセボ対照二重盲検並行群間試験です。プライマリアウトカムは、高地滞在時の急性高山病およびその他の高度関連障害の発症の複合としました。どうでもいいですけど、最近、複合アウトカムがはやっていますね。呼吸器系の雑誌にもこういうアウトカム設定が増えてきました。

 合計60人のCOPD患者さんがデキサメタゾン群(年齢中央値57歳、%1秒量中央値86%、760m地点でのPaO2中央値9.6kPa)に割り付けられ、急性高山病およびその他の高度関連障害は13人(22%)に発症しました。デキサメタゾンを投与されていないプラセボ群の58人では同障害の発症は14人(24%)で、有意差はありませんでした(図1)。また、デキサメタゾンはプラセボと比較して高地によるPaO2減少に寄与しました(平均差0.4kPa、p=0.028)。

図1 急性高山病およびその他の高度関連障害に対するデキサメタゾンとプラセボの効果の比較(文献より引用)(*クリックすると拡大表示します)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」を基に『ねころんで読める呼吸のすべて』(2015年)、『咳のみかた、考えかた』(2017年)などの書籍を刊行している。

連載の紹介

Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器 内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。

この記事を読んでいる人におすすめ