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ピシバニールは間質性肺炎の気胸に有効か?
Respiratory Investigation誌から

2018/08/13
倉原優(近畿中央胸部疾患センター)

 ピシバニール(OK-432)という抗癌剤、ご存知でしょうか。呼吸器内科では有名な抗癌剤なのですが、実は悪性腫瘍に対する治療薬として用いるわけではりません。

 ピシバニールはStreptococcus pyogenes Su株のペニシリン処理凍結乾燥粉末で、その昔、悪性腫瘍に対する有効性が示されていましたが、現在は有効な抗癌剤がどんどん開発されており、もはや悪性腫瘍に用いられることはなくなりました。

 しかし、悪性胸水や気胸に対する胸腔内注入療法が胸水量を減らしたり気胸を治癒する効果があることから、胸膜癒着術の際、注入する癒着剤の選択肢として現在もよく使われています。しかしこのピシバニール、注入すると炎症反応がかなり強く、胸痛と発熱は必発なのです。

 胸膜癒着術というのは、気胸の場合「穴をふさぐこと」が目的で、悪性胸水の場合「水が貯まる速度を落とすこと」が目的です。そのため、前者には自己血、50%ブドウ糖、後者にはピシバニール、ミノサイクリンなどがよく使われます。もちろん、前者に対してピシバニールを用いることもあります。

 ここだけの話、何となくですが間質性肺炎を合併した気胸には使わない方がいいのかな……と思う呼吸器内科医が多いです(炎症によって間質性肺炎が増悪するのではないかという懸念があるから)。

 今回の論文は、Respiratory Investigation誌に投稿された「OK-432胸膜癒着術による間質性肺炎患者の気胸治療(OK-432 pleurodesis for the treatment of pneumothorax in patients with interstitial pneumonia」(Ogawa K, et al. Respiratory Investigation)です。

 この研究では、約10年におよぶ間質性肺炎合併気胸の患者さん84人が同定されましたが、肺生検後の医原性の気胸や長期に追跡できない症例は除外され、ピシバニールを用いて胸膜癒着術が行われた39人が後ろ向きに登録されました。

 ピシバニールは、胸腔ドレーンから5~10KE注入されました。KEというのは、ドイツ語で臨床単位(Klinische Einheit)という意味で、なんでこの古い単位が残っているのかは私もよく知りません。研修医に「KEって何か知ってる?」と聞くのが呼吸器内科指導医の定番の質問です。多分。

 さて、本研究において、(1)エアリークなく胸腔ドレーンが抜去できる、(2)胸腔ドレーン抜去から4週間以内に気胸の再発がなく追加的治療を要さない──、状態であれば胸膜癒着術成功としました。

 39人に対して合計46回のOK-432による胸膜癒着術が行われました。39人の間質性肺炎のパターンは、UIPパターンが25人、非UIPパターンが14人でした。つまり、半数以上が特発性肺線維症のような陰影を呈していたということです。ほとんどの症例はOK-432を1回注入しただけですが、中には複数回注入された症例もあったそうです。

 処置成功率は63%(46回中29回)でした。再発したのは46回中8回(17.4%)でした。Grade 5(死亡)の有害事象は8人に起こり、そのうち2人は間質性肺炎の増悪でした(表)。5人が誤嚥性肺炎、1人が気胸で死亡しましたが、胸膜癒着剤とは関連性はなさそうです。

表 OK-432による胸膜癒着術の有害事象(文献より引用)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」を基に『ねころんで読める呼吸のすべて』(2015年)、『咳のみかた、考えかた』(2017年)などの書籍を刊行している。

連載の紹介

Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器 内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。

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