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特発性肺線維症の新治療薬:遺伝子組み換え型ヒトペントラキシン2
JAMA誌から

2018/07/27
倉原優(近畿中央胸部疾患センター)

 2018年5月にサンディエゴで開催されたアメリカ胸部学会(American Thoracic Society)の総会では、特発性肺線維症(IPF)の新しい治療がいくつか紹介されていました。その中で、トップジャーナルに掲載されたものを今月2編紹介させていただきます。

 今回は、遺伝子組み換え型ヒトペントラキシン2に関する論文です。

 論文は、JAMA誌に投稿された「IPF患者におけるプラセボと比較した遺伝子組み替え型ヒトペントラキシン2の努力性肺活量に対する効果:ランダム化比較試験(Effect of Recombinant Human Pentraxin 2 vs Placebo on Change in Forced Vital Capacity in Patients With Idiopathic Pulmonary Fibrosis : A Randomized Clinical Trial)」(Raghu G, et al. JAMA. doi:10.1001/jama.2018.6129)です。

 まず、ペントラキシンって何よ、って話です。

 私も詳しいわけではないのですが、「CRPの仲間」だと理解すればよいと思っています。炎症性メディエーターのうち、ペントラキシン構造のアミノ酸配列をもつ一群をペントラキシンファミリーと呼びます。このペントラキシンファミリ―の中には、CRP、血清アミロイドAなども含まれます。ペントラキシン2は組織が損傷したところで作用し、線維化を抑制する作用があります。今回使われた遺伝子組み換え型ヒトペントラキシン2はPRM-151という名で知られており、TGF-β1を過剰発現したブレオマイシン肺線維症モデルのマウスだけでなく、骨髄線維症などの他臓器の線維性疾患でも有効性が確認されています。

 本研究は、遺伝子組み換え型ヒトペントラキシン2とプラセボを比較し、28週時点での努力性肺活量の平均変化を調べることが目的です。

 IPFと診断された患者さん117人が対象となりました。適格基準は、年齢40~80歳、%努力性肺活量50%~90%、1秒率70%超、%DLCO25~90%、6分間歩行距離150m以上などの規定が設けられています。7カ国18施設で3年近くにわたり第2相が実施され、登録された患者さんはランダムにペントラキシン2(10mg/kg静注4週ごと:77人)あるいはプラセボ(39人)に24週間割り付けられました。プライマリエンドポイントは、ベースラインから28週時点での%努力性肺活量の最小二乗平均変化としました。セカンダリエンドポイントは胸部HRCTにおける肺容量の変化、6分間歩行距離としました。

 登録患者さん117人がランダム化されました。1人を除く116人が少なくとも1回の薬剤治療を受けました(平均年齢68.6歳、81%が男性、IPF診断からの平均期間3.8年)。111人が試験を完遂しました。ベースラインから28週時点での%努力性肺活量の最小二乗平均変化は、ペントラキシン2群が-2.5%、プラセボ群が-4.8%でした(差+2.3%、p=0.001)。肺容量については両群とも有意差はありませんでした。6分間歩行距離の変化はペントラキシン2群で-0.5m、プラセボ群で-31.8mでした(差+31.3m、p<0.001)()。ペントラキシン2による有害事象として、咳嗽、疲労、鼻咽頭炎などが報告されていますが、特有の重篤な有害事象はなかったようです。

 ベースラインからの6分間歩行距離の平均変化(m)(文献より引用)

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」を基に『ねころんで読める呼吸のすべて』(2015年)、『咳のみかた、考えかた』(2017年)などの書籍を刊行している。

連載の紹介

Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器 内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。

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