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Respirology誌から
重症喘息発作に硫酸マグネシウムの静注は効く?

2016/03/18
倉原優(近畿中央胸部疾患センター)

 「マグネシウムって喘息に効くんですか?」と研修医に質問されることって、ありますよね。私はマグネシウムがバツグンに効いた症例はあまり経験していません。それでもなお、喘息の重積発作を目の当たりにした場合、やはりアドレナリンやマグネシウムといった伝家の宝刀を抜かざるを得ないのが呼吸器内科医ではないでしょうか。

 マグネシウムはカルシウムが平滑筋に流入するのを阻害する役割があるとされています。そのため、気道平滑筋が相対的に弛緩されることで発作が軽減するそうです。成人喘息に対する静注マグネシウムの投与は入院の頻度を減らすとされています(100人の気管支喘息発作にマグネシウムを投与することでおよそ7人の入院を減らす)1)。GINAガイドラインでもルーチンの使用は推奨しておらず、通常の治療に反応しない重症例やベースラインの1秒量が低い例に用いるべきと記載されています2)

 紹介するのは、喘息発作に対する硫酸マグネシウムの静脈内投与の効果を検証した論文です。タイトルは「重症喘息発作の患者の死亡率に対する硫酸マグネシウム静脈内投与の影響(Effect of intravenous magnesium sulfate on mortality in patients with severe acute asthma.)」(Hirashima J, et al. Respirology. 2016 Jan 18. doi: 10.1111/resp.12733. [Epub ahead of print])という論文です。日本呼吸器学会員にはおなじみのRespirologyからの報告です。東京大学大学院医学系研究科の平嶋純子先生が筆頭著者です。

 ステロイドの静脈内投与および酸素療法を要する重症喘息患者を、DPC入院データベースから抽出しました。硫酸マグネシウムの静脈内投与を行われた患者と行われていない患者の間で傾向スコアマッチを行いました。本研究のプライマリ・アウトカムは、7日・14日・28日死亡率に設定しました。セカンダリ・アウトカムとして、入院中のステロイド投与量、人工呼吸器装着期間、入院期間を設定しました。

 集計すると、合計14,122人の患者さんのうち、619人に硫酸マグネシウムが投与されていました。傾向スコアマッチによって、599人のペアコホートを作成しました。その結果、硫酸マグネシウムの投与による28日死亡率には両群に差はみられなかったそうです(1.3% vs 1.8%、P=0.488)。また、ステロイド投与量(P=0.580)、人工呼吸器装着期間中央値(P=0.118)、入院期間中央値(P=0.640)にも差はみられませんでした。うーむ、伝家の宝刀とはいえ、抜いても相手を斬れないというシロモノなのでしょうか……。

 今回検証されたアウトカムでは確かに差はみられませんでしたが、補助的な位置付けとしては他のアウトカムも検討していただきたいところです。それでも差がなければ、マグネシウムは喘息治療という舞台からは降板を余儀なくされることでしょう。

 どうしても投与したいというケースでは、硫酸マグネシウムを20分かけて2g静脈内に投与する方法が一般的です。硫酸Mg補正液やマグネゾールといった製品を1アンプル用います。しかし、マグネゾールは執筆時点では子癇に対してしか適応がありません。

著者プロフィール

倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」を基に『ねころんで読める呼吸のすべて』(2015年)、『咳のみかた、考えかた』(2017年)などの書籍を刊行している。

連載の紹介

Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する若手医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器 内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。

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