呼吸器内科領域で、頻繁に使われる吸入薬の1つが吸入ステロイド(ICS)。多くは気管支喘息に用いられますが、時にCOPDにも使われます。原則としてICSをCOPD患者さんに単剤で使用することはまずありません。長時間作用性抗コリン薬(LAMA)や長時間作用性β2刺激薬(LABA)をそれぞれ単剤で使ったり、この2種類を組み合わせて用いる(LAMA+LABA)のが一般的です。
しかし、当院のように重症のCOPD患者さんが多い施設では、LAMAやLABA、LAMA+LABAを処方しても効果が得られにくい症例や患者さんから使いにくいと訴えられるケースもあります。こうした症例では、ここぞというときに抗炎症作用を期待してICSを上乗せで処方することがあるのです。結果的に、LAMA+ICSあるいはLABA+ICSといった組み合わせになる例もあるというわけです。
海外で使われている薬剤を含めるとICSにはたくさんの種類がありますが、この中で最もCOPDにエビデンスがあるのはフルチカゾン(フルタイド)です(ただし、日本ではICS単剤にCOPDの適応はありませんので注意してください)。実際には、LABA+ICS(シムビコート、アドエア)の合剤が使われることが多いです。
ICS単独でどのくらいのパワーがあるかというと、プラセボよりも1秒量上のメリットがあるかもしれないというくらい。年間の1秒量の差で多くても10mLくらいでしょうか1)、2)。
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著者プロフィール
倉原優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター呼吸器内科)●くらはら ゆう氏。2006年滋賀医大卒。洛和会音羽病院を経て08年から現職。自身のブログ「呼吸器内科医」で論文の解説やエッセイを執筆。著書は『ねころんで読める呼吸』シリーズ、『本当にあった医学論文』シリーズ、他多数。

連載の紹介
Dr.倉原の呼吸器論文あれこれ
倉原氏は、呼吸器病棟で活躍する医師。呼吸器診療に携わる医療従事者が知っておくべき薬や治療、手技の最新論文の内容を、人気ブログ「呼吸器内科医」の著者が日々の診療で培った知見と共に解説します。呼吸器診療の最先端を学べる臨床連載です。
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