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第4回 患者の意思は最期まで揺れ動く
胃瘻で数年は生きられる、けれど拒否…

2018/06/14
新田 國夫(新田クリニック)

 前回は、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について書きました。また、終末期の患者さんにおいて点滴を絞るという行為は、医療の限界を受け入れ、痰が増えるなどの有害事象を回避するための行為であり、消極的安楽死と呼ぶべきものではないとも述べました。

 今回はその逆、医療としてはできることが残っているにもかかわらず、患者さんの意思を尊重し敢えて医学的介入をせずにお看取りに至ったAさんを紹介します。医療者にとっては倫理的ジレンマを強く感じるケースですが、「本人の意思を尊重する」とは、どのようなことなのかをお伝えできればと思います。

 Aさんは多系統萎縮症の70歳代後半の患者さんです。会話は普通にでき、認知機能に問題はありません。ただ、嚥下障害が進み、食事が取れなくなりました。ほぼ寝たきりではありましたが、人工栄養さえ行えば、あと数年は生きられると予想される、そんな患者さんでした。

 私自身、訪問診療時に胃瘻を造設するよう説得しましたが、本人は拒否され、ご家族も本人の意思を尊重すると結論されました。とはいえ、本人の気持ちが揺れていることも分かりましたので、最後まで本人の考えが変わらないか、変わればそれに対応する方針としました。

著者プロフィール

1967年早稲田大学第一商学部卒。1979年帝京大学医学部卒。同大学病院第一外科、救命救急センターを経て、1990年に東京都国立市に新田クリニックを開業。92年医療法人社団つくし会設立、理事長に就任。全国在宅療養支援診療所連絡会会長、2012年に日本臨床倫理学会を設立し理事長に就任。

連載の紹介

新田國夫の「直伝・高齢者診療の極意」
高齢者診療では「人生の締めくくりを豊かなものにするために何ができるか」をいつも考える必要があると説く新田氏。在宅診療の第一人者として地域に根ざした高齢者診療を20年以上実践してきた新田氏が、高齢者診療で大切にしたい考え方や診療の実際を解説する。

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