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4/7放送 NHK『総合診療医ドクターGセレクション』から
ドクターG◆せきと熱を繰り返す謎の病気

2015/04/23

 最近の健康番組は、なぜか食べ物の栄養素関連の内容ばっかりです。いつぞやは、どの番組も認知症ばっかりでしたし、流行というのがあるのでしょうか。それとも、この手の番組の放送作家さんのネタ元が、かなり限定されているのが原因だったりして。

 そんな中、懐かしい番組名を新聞のテレビ番組欄で発見しました。そう「ドクターG」です。新しいシーズン6が始まったのかな、と思ったのですが、よく見ると「セレクション」ということで2014年に放映したシーズン5の再放送のようでした。しばらく再放送が続くようです。

 4/7に放送があったシーズン5の初回は、当時なぜか私は見逃していたようなので、再放送ではありますが取り上げさせていただきます。ドクターGがどんな番組か、ご存じない方はこちらの回の前半をご一読ください。

 ドクターGは、この番組でおなじみの総合診療医の鈴木富雄先生です。この番組に最多出演だそうです。昨年のオンエア時点では名古屋大学病院の所属でしたが、現在は大阪医大病院の総合診療科長だとのこと。

 症例は「せきと熱を繰り返す」という42歳の主婦です。症状が出始める3カ月前に、義母と同居するために中古住宅を購入し、引っ越したシーンが描かれます。「3カ月前(1月中旬)」とテロップが出ていますが、この1月という季節は重要なのでしょうか。このシーンでは義母との同居ストレスよりも、引っ越しの掃除でエアコンの汚れや埃がひどいことが強調されます。さあ、この辺りはヒントなのかトラップなのか。いつも通りの展開にわくわくします。

 この主婦は、引っ越して3日目に雨に濡れ、その後に最初の咳と発熱があったと言います。でも他の家族は変わりなく元気です。その2週間後にも咳と熱がありましが、薬を飲んだりせずに一晩でよくなりました。その後も、何度か同様の症状と回復を繰り返しました。

 ドクターGがこの患者さんに「経過観察のための入院」を勧めたところで、場面はスタジオに戻り、研修医による最初の疑い病名の提示に進みます。バイタルでは、体温39.0℃というのと、SpO2が94%というのが気になります。

 3人の研修医が提示したのは、「過敏性肺臓炎」「過敏性肺臓炎」「過敏性肺臓炎」。回答が全員かぶりました。でも、過敏性肺臓炎だと、テレビ的には分かりやす過ぎるんじゃ? これが正解だと、番組が終わっちゃいますしねえ。まあ後講釈で申し上げるとすれば、ここまでの情報では、正解にたどり着くわけがありません。

 ここでドクターGから、病名と合わない症状に注目するように促されます。今回の症例では、症状が出ていない時期がある点が過敏性肺臓炎とは合いません。次に、熱に注目します。原因として考えられるのは、インフルエンザや結核といった感染症、サルコイドーシスや全身性エリトマトーデスといった膠原病が研修医から挙がってきます。その他にも悪性リンパ腫といった腫瘍でも発熱することがあります。

 ドクターGは、次の再現ビデオに進む前に、この段階で注意して確認したいことを研修医に問いかけます。研修医からは、関節の痛みや皮膚症状、家族の既往歴といった声があがりました。

 再現ドラマに戻りまして、症状が実は9カ月前からあったことや、体重減少、寝汗があることが語られます。院内検査では胸部・腹部CT異常なし、血液検査に目立った異常なし。症状が軽快したため3日で退院したのですが、その4日後に咳と熱が再発して再来院しました。血液検査の「目立った」異常なし、っていうのはなんか怪しい言い回しですよねぇ。

 ここで研修医から2回目の病名提示です。「ホジキンリンパ腫」「悪性リンパ腫」「多発血管炎性肉芽腫症」が挙がりました。症状が実は引っ越し前からあったということで全員が過敏性肺臓炎を否定しました。引っ越しというイベントと症状を結び付けて患者さんが発症時期を覚えているというのはリアルだとは思いますが、エアコンの埃も含めて、やはりあの辺はトラップだったんですね。

 続けて、病気を絞り込むために、問診や身体診察などで追加で入手したい情報をドクターGにリクエストしていきます。まず膠原病かどうかを判断するために、関節の痛み、皮膚症状を訪ねますが、いずれの症状もありません。次に、多発血管炎性肉芽腫症の可能性を検討するために、鼻水などの鼻症状を確認しますが、これもありません。続いて、リンパ節の腫れを確認しますが、これもありません。

 研修医が提示した病名が、全て否定されたところで、ドクターGは「病気の周期」に言及します。症状の周期がだんだん短くなっているということは、病気が進行しているとことを意味しているという解説とともに、来院時の胸部レントゲン写真を見せます。が、レントゲン写真に影は見えません。でも、SpO2が94%ですから、呼吸器に疾患があると考える必要があります。

 ここで、ドクターGから「影なき敵を追え」という名言が飛び出します。影がないので呼吸音を聞いてみますが、これにも雑音は認められません。気管支や肺胞ではないようです。そこで、肺の血管が詰まっているのでないか、という研修医からの声があります。

 リンパ腫はさきほどリンパ節の腫脹がなかったことから否定したのですが、リンパ節の腫脹がないリンパ腫もあるということで、「血管内リンパ腫」という最終診断にたどり着きました。結果的に、「悪性リンパ腫」という診断は間違ってはいなかったわけです。実際の症例では、その後、肺の細胞診で癌化したリンパ球が見つかったようです。

 ちょっと今回は、最終診断は難しいところに着地しましたが、やはりエンターテインメントとしてのドクターGは健在です。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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