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11/19放送 NHK『ためしてガッテン』から
ためしてガッテン◆それは「目やに」じゃない

2014/11/27

 今週もいろいろな健康番組をチェックしましたが、やっぱり「ためしてガッテン」が一番突っ込みどころ満載だったので、2週連続で恐縮ですが、こちらを紹介します。

 今回のテーマは「1200万人!目の現代病 危険な目やに発見ワザ」です。毎回、テーマに過激なキーワードを盛り込むのが“ガッテン流”。今回は「危険な目やに」だそうで、怪しいニオイがプンプンします。

 番組の冒頭に、iPS細胞を使った再生医療のニュース映像が紹介されます(関連記事)。今年9月に世界で初めて臨床研究が始まった「滲出型加齢黄斑変性」の治療です。どうやら、番組タイトルにある「目の現代病」は、黄斑変性のことのようで。

 番組では「緑内障」「白内障」「黄斑変性」と3つ並べて、「黄斑変性」をクローズアップしていきます。これには、ちょっと感動。確かに、どの眼疾患も「緑」「白」「黄」と色から始まりますね。だからどうってこともないんですが。

 そして黄斑変性を「欧米では失明原因の第1位です」と紹介します。でも日本では、緑内障、糖尿病性網膜症、網膜色素変性に次いで、失明原因疾患の第4位なんですよね。もちろん番組では、そんな中途半端な順位には言及しません。

 続いて、黄斑変性の患者さんの再現ドラマです。黄斑変性があると、ものがどんな見え方をするかを映像で再現していきます。変視症による視界のゆがみを、車で走っているときの車線がぐにゃぐにゃしている様子で表現し、中心暗点を相手の顔が真っ黒になるということで表現していました。そして続く映像で、黄斑部が構造的に盛り上がっている様子を紹介します。この辺は、テレビらしいとても分かりやすい説明で、上手な演出だと思いました。

 さて、この患者さん、毎年人間ドックを受けて正常だと言われていたのに、1年以内に重度の視覚障害に陥ったそうです。これ、まるで前回と同じパターンですね。しかし、この「いきなり悪化パターン」で恐怖心をあおるのは、どうにもいただけません。

 その後は、こちらも前回と同じで、「こんな危険な病気は早めに見つけるのが一番」という展開。そして、ついに「目やに」が登場しました。いや、これ、目やにってごまかしてますが、ホントは目やにじゃありません。軟性ドルーゼンという網膜の下にたまる老廃物です。軟性ドルーゼンは、加齢黄斑変性で見られるよく前駆症状であることは間違いないんですが、いくらなんでも「目やに」はないんじゃないでしょうか。だって、網膜の裏側ですよ。

 番組では、日本でも1200万人にドルーゼンが認められると紹介していました。要は、定期的な受診でドルーゼンを早い段階で見つけて、黄斑変性の重症化を防ぎましょう、というわけです。定期受診自体はとてもよいと思いますが、もしかしたら今週あたり、各地の眼科に「目やにが出ていないか診てください」という患者さんが殺到したりはしていないでしょうか。心配です。

 次は、ブルーライトがドルーゼンをできやすくするという話。そして、黄斑色素がブルーライトによるダメージを軽減するという説明。黄斑色素は緑黄色野菜を食べると増える。だから、ブルーライトによる黄斑変性を防ぐために緑黄色野菜を食べましょう、という論法で、ガッテンお得意の食事療法に持ち込みます。

 まあ、いつものガッテンなら「緑黄色野菜で失明を撃退」くらいの表現をしそうなところですが、今回は「危険な目やにを発見」ですから、かわいいもんですね。

 最後は治療方法の紹介です。失明に至る前に眼球に抗VEGF薬の注射をすることで視力が回復した患者さんが登場しました。「10秒治療」なんてテロップで紹介していましたが……。確かに注射自体は10秒なんでしょうけど、毎月3回通院して、それをずっと続けるわけですから、ちょっとこちらも大げさすぎる表現ではないでしょうか。

 加齢黄斑変性については、難病情報センターのウェブサイトに医療従事者向けの詳しい情報があります。これによると喫煙もかなりのリスクファクターのようですが、ガッテン的には、禁煙よりも、緑黄色野菜なんですね。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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