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11/12放送 NHK『ためしてガッテン』から
ためしてガッテン◆3分間で肝癌を8割予防!?

2014/11/19

 久しぶりに「ためしてガッテン」が、ガッツリと健康ネタを特集していました。テーマは「肝癌」、番組タイトルは「3分で8割減!肝がん撲滅SP」です。これ、いつもの健康番組のパターンなら、「毎日3分○○をすると肝癌が8割予防できます」ってことですよね。でも、そんな○○ってあるの? 気になります。こりゃ見るしかありません。

 番組は、肝癌についての予備知識をゲストの芸能人と共有するところからスタートしました。肝癌の原因は、アルコールによるものは5%程度で、脂肪肝が15%、B型肝炎ウイルス15%、C型肝炎ウイルス65%だと紹介されました。

 このデータを見て、ゲストの一人はアルコールを原因とする肝癌が意外に少ないことにビックリしていました。でも、アルコールを飲まなくても肝癌にはなるっていうだけで、飲酒によって肝癌リスクが高まらないわけではありません。国立がん研究センターも、飲酒は肝癌のリスクを上昇するというデータを示しています。ちょっと、その辺がミスリードだった気がしました。

 続いて、原因の8割を占めるウイルス肝炎に話題が移っていきます。あ、タイトルの「8割減!」っていうのは、これですか。B型肝炎ウイルス15%+C型肝炎ウイルス65%=80%と。でも番組内では、そのことは一切触れられません。

 そして、7年前に肝癌と診断された73歳の女性の再現ドラマへ。この患者さんは30年前に急性肝炎を患い、治療をしました。その後の20年間は、定期検診でも肝機能に異常は見られませんでした。にもかかわらず、定期検診で正常と言われた1カ月後に肝癌が見つかったそうです。その後の検査でB型肝炎ウイルスのキャリアであることが判明したことから、この患者さんは「肝炎ウイルスが原因の肝癌でしょう」という結論になりました。だから、みなさん、肝炎ウイルスの検査を受けましょう、というわけです。

 うーん。ここで、慢性肝炎→肝硬変→肝癌といったオーソドックスな経過の症例ではなく、突然肝癌を発症した例を紹介しますか。ご高齢ですし、そうしたケースもあるのかもしれませんが、この症例を取り上げると、B型肝炎ウイルスのキャリアの方は、いきなり肝癌を発症するのが一般的、という誤解を与えやしないでしょうか。

 加えて、本当にこの患者さんの肝癌がB型肝炎ウイルスによるものなのか、という疑問もあります。キャリアではあったのでしょうが、他の原因で肝癌が発生している可能性もあるわけで。納得いきません。

 続いて、肝炎ウイルス検査の説明に進みます。保健所などで無料で検査ができることを紹介し、「検査を受けましょう」と呼びかけます。そして、この検査が「たった3分でできる」と。え? ま、まさか、番組タイトルの「3分」って、この検査時間のこと? しかーし、ここでも、番組のタイトルについての説明はないのでありました。

 番組は最後に、ウイルス肝炎の治療の話題へ。B型肝炎もC型肝炎も、新薬が登場して治療が大幅に進化したことがさらりと紹介されました。そういえば、日経メディカル Onlineでも、今年の日本消化器関連学会週間(JDDW)でB型肝炎やC型肝炎のセッションが盛り上がっていた、という記事が出ていましたね。

 驚いたことに、結局、何をどうすると「3分で8割減」なのかの説明がないまま番組は終了しました。想像するに、「3分間で終わる検査をすれば、肝癌の原因の8割を占める肝炎ウイルスの保持者かどうかが分かります。今はウイルス肝炎の治療薬も充実していますから、みなさんぜひ、肝炎ウイルスの検査を受けましょう」という趣旨だったのでしょう。

 もちろん「肝炎ウイルスの検査を受けましょう」という啓発をテレビでするのは全然アリですし、どんどんやっていただきたいのですが、タイトルも、その結論に至るまでの説明も、どうにもモヤモヤしてしまった残念な回でした。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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