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8/26放送 テレビ朝日系『たけしの健康エンターテインメント!』から
みんなの家庭の医学◆6000万人が下半身トラブル!?

2014/09/06

 今回は「尿&便トラブルを解消するための新事実SP」というテーマの『たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学』を観てみました。尿漏れ、便漏れというのは、中高年になると気になる症状のようですが、なかなか相談しづらい場合もあるようです。

 ツカミはやっぱり、いつもの統計データ。「便失禁に悩む方、約500万人」「尿漏れに悩む方、約1000万人」「夜間頻尿、約4500万人」と矢継ぎ早にだんだん大きな数値データを示して、ついには、その数値を足しあげて「延べ6000万人が悩む下半身トラブル」とまとめました。いやあ、それ、単純に足しちゃっていいんでしょうか。それぞれ違うところが出した推計データなのに。そもそも尿漏れに悩む方の幾ばくかは、夜間頻尿もあったりしますよね。いや、まあ、とにかく、悩んでいる方は少なくないってことでヨシとしましょうか。

 番組は、頻尿・尿漏れといった尿トラブルの「新事実」に迫ります。再現ドラマで、泌尿器科を受診して薬を飲んでも効果がなく、徐々に尿漏れの症状が悪化していく62歳男性のケースが紹介されます。しかし、この再現ドラマ、引っ張ること引っ張ること。再現ドラマが始まってから新事実の発表まで、1時間番組の中で15分ですよ。そんなに特別な症状でもなく、ごくごく普通に考えられる尿漏れっぽかったんですが。

 そして、ようやく明らかになる新事実は、いわゆる「隠れ脳梗塞」でした。獨協医科大学病院排泄機能センターの山西友典センター長によりますと、隠れ脳梗塞の7割で夜間頻尿、4割が尿漏れの症状があるとのことです。

 でも、よく考えると「隠れ」ってどういうことなんでしょう。このケースでは、明らかに症状が出ているわけで、少なくとも無症候性脳梗塞とは言えそうにありません。脳梗塞による症状であることに「気づいていない」ことを、ここでは「隠れ」と言っているんでしょうか。じゃなくて、症状の裏に脳梗塞が隠れていた、ということ? それは、普通の「脳梗塞」なのでは。

 ちなみに、番組が言う「隠れ脳梗塞」では、動作が鈍くなることが多いとのこと。そういった症状に心当たりがあれば神経内科を受診しましょう、というコメントがありました。

 続いての新事実は、「便失禁」に関するものです。最初に、さいたま市の指扇病院に昨年設立された排便機能外来の紹介があります。様々な原因によって発症する可能性のある便失禁で、どの科を受診するか迷うことなく受診できるのは、患者にとってうれしい限りです。

 続いて、73歳女性の再現ドラマです。この方は胃腸科を受診したものの異常なしと言われ、その後も症状が悪化していきます。家族に勧められて、もう一度受診しますが、肛門科、婦人科、総合病院の内科を受診するも原因は分からずじまいで、治療も効果がありません。これ、展開的には、前半の症例とかなり似通っているんですが、飽きませんかね、テレビを見ている人が。

 最終的に、この患者さんは、先ほど紹介のあった指扇病院の排便機能外来を受診し、新事実が明らかになります。しかし、新事実の紹介の前に、便失禁のタイプの紹介を挟んでじらします。「漏出性便失禁」と「切迫性便失禁」についての簡単な説明です。両者に共通する原因として、肛門括約筋の弛緩があるとのこと。

 肛門括約筋には、内肛門括約筋と外肛門括約筋があるわけですが、この患者さんは、内肛門括約筋が加齢によって弱まった上に、軟便が重なって便失禁になっていたことが分かりました。薬物療法を試したところ、効果が現れてきたとのことです。

 こちらの排便機能外来では、内肛門括約筋の機能低下には薬物療法、外肛門括約筋の機能低下には筋肉を鍛えるバイオフィードバック療法が行われるそうです。そして、新たな治療法として2014年から保険適用された仙骨神経刺激療法(関連記事)を導入しているそうです。ちなみに、日本大腸肛門病学会では、便失禁診療ガイドラインを作成しようとしているようです。

 ということで、結局、後半部分の新事実がいったい何だったのか、番組を見ている限りではよく分かりませんでした。悔しいので、仕方なく番組のホームページを見てみたところ、「最近では排便機能外来がある」ってことが後半の新事実だったようです。えーっと、そうですか。うーん。そこかあ。

 いつも、それなりの新事実を(多少のこじつけはあっても)提示してくれるこの番組ですが、何だか今回は中途半端で、突っ込むこともままならず、不完全燃焼な内容でした。残念。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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