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8/22放送 NHK『ドクターG』から
ドクターG◆勝負は最初の数秒にあり!

2014/08/27

 頻度が高くて何だか恐縮ですが、今回も『総合診療医 ドクターG』を紹介させていただきます。8/22の放送では、いつもと違う展開がそこかしこに見られて、どうなることかと手に汗を握りました。

 『ドクターG』がどんな番組か、ご存じない方はこちらの回の前半をご一読ください。

 今回の症例は「なぜか食べられない」と訴える62歳の男性です。2年前に高校教師を退職してから小説を書いているのですが、教え子に新人賞の先を越されてしまって、あせっています。それ以来、食欲が減退してしまいました。この症例をプレゼンするドクターGは、沖縄県立中部病院の金城光代氏です。

 症状としては「ここ1週間ほどお腹が張っている」のですが、腹痛、下痢、便秘はありません。再現ドラマでは、小説を書きながらタバコの吸い殻が灰皿に山盛りなのが気になりました。これはヒントか、それともいつものトラップか?。それから、小説の一次審査が通ったお祝いの自宅での食事のシーンでは、ステーキや大盛りのパスタが映っていました。このころの大食い生活も、何かのヒントなのか、それとも……。

 現在も、食欲が全くないわけではなく、食欲があっても量が食べられなくて、これまでの半分くらい残してしまうようになった、とのこと。普段からあまり運動をせず、冷房を効かせてソファで本を読んでいるシーンも出てきました。そして、食べる量は減っているのに、外出しようとするとシャツも靴もきつくなっていたというエピソードも。

 教え子が先に小説の新人賞を受賞してからは元気がなくなり、タバコもほとんど吸わなくなりました。ちなみにバイタルは、体温、血圧、脈拍ともにわずかに高いといった状態です。……などなど、いつものように色々な伏線が張り巡らされます。

第1回目の提示で、まさかの「病名カブリ」
 ここで3人の研修医から、第1回目の疑い病名の提示です。その前に、ゲストの堀ちえみさんと高橋ジョージさんから、「急性膵炎」「腎不全」「糖尿病」というキーワードが挙がってきました。なかなか素人離れした回答ですね。

 さて、ここで研修医から提示された病名は「肝硬変」「肝硬変」「ネフローゼ症候群」ということで、珍しく「肝硬変」がかぶりました。いつもだと、キレイに3つバラバラに分かれるんですが、同じ回答が出ることもあるんですね。このコラムで何度もツッコんだ影響? そんなわけないですね。

 いつもなら、いずれの診断名も10分も経たないうちにあっさり否定される運命です。ゲストの高橋ジョージさんも、「この診断、全部違うんだろう」って茶化してました。よくご存じで。でも、もしかして、今回は珍しくかぶった「肝硬変」が正解だったりすると、それはそれで新しい展開だなあ。

 研修医のみなさんは、お腹が張る、足のむくみ、息切れといった患者の訴えから「水がたまっている」と考えたとのこと。ここでドクターGが解説に入ります。まずはお腹の張りから腸閉塞の可能性について検討してみますが、消化器症状がないので否定されます。そして、臓器肥大の疑いを匂わせつつ、再現ドラマの続きに進みます。

 再現ドラマでは、触診による腹部左上の張り、睡眠障害、寝汗、ペンで字がうまく書けなくなった、体重増加、息切れなどが描写されます。ゲストの高橋ジョージさんは「分かった!」と言い放ち、「脳梗塞、脳血栓」とコメントされていました。んー、今回はゲストがかなり積極的に参加してきます。うっかり当たっちゃったらどうするんだろう、とか心配したりして。

 2回目の研修医からの病名提示は「肝硬変」「肝硬変」「悪性リンパ腫」。なんと! さらに、いつもとは違うパターンで攻めてきます。同じ病名の繰り返し、しかもその病名がかぶっているのも気にしません。こりゃ「肝硬変」で決まり? それとも、最初の診断にこだわってしまう研修医の性(さが)を表現しているのでしょうか。

 3人目の研修医は、寝汗という新しい情報から、ネフローゼ症候群から悪性リンパ腫に変更しています。他の2人は、患者からの追加情報も含めて、肝硬変で説明できると考えたそうです。この時点で3人に共通しているのは、お腹の張りは脾臓の腫大を考えていること。触診で腹水は否定できたとのこと。

 そこで、ドクターGも脾臓の腫れの原因を掘り下げていきますが、脾臓の腫れだけでは診断を絞り切れないので、他の症状を検討することを提案します。そして、むくみ、息切れ、体重増加から心不全の可能性につなげていきます。

 心不全もいろいろな原因がありますので、もう一つのキーワードとして発熱も取り上げます。そして、「脾臓の腫れ」「心不全」「発熱」というキーワードを併せて整理して残ったのが「悪性リンパ腫」「感染性心内膜炎」です。おっと、三番さんの見立ての「悪性リンパ腫」が残ってますが、これが正解ってパターンはあるのか!?

「ペンで字が書きにくい」に着目
 ここで注目が集まったのは「ペンで字が書きにくい」という点。指を詳細に診察したいと研修医が訴えると、ドクターGこと金城医師は「では、見てみましょう」ということで、追加の再現ドラマで指を診察しているシーンを見せます。

 結局、この診察シーンで「オスラー結節」が認められたことから「感染性心内膜炎」で決着しました。この後、番組内では、感染性心内膜炎の診断と治療を番組内でおさらいしていました。詳しくは、日本循環器学会の『感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2008年改訂版)』で確認できます。

 このガイドラインの「臨床症状」の項目から一部を紹介しますと、「亜急性感染性心内膜炎では、発熱、全身倦怠感、食欲不振、体重減少、関節痛等の非特異的な症状を呈する」「その発現日は通常特定しにくいが、抜歯、扁桃摘除等と関連している場合もある」「非特異的な症状のため、見逃されて経過する場合がありうる」とのことです。

 最後にドクターGからは、「患者の主訴にはない息切れ感が最初に印象に残ったので、そこが診断の決め手になった」とのコメントがありました。最初の数秒の患者観察が勝負、というわけです。

 今回は、いつものパターンを覆す展開が随所にあったので、健康番組ウォッチャーとしてはかなり楽しめましたが、振り返ってみると、伏線とみられた数々のエピソードは、いつものように、ことごとくトラップでしたね。視聴者を飽きさせない程度に適度にバリエーションをつけながら、決めるところはいつものパターンでビシッと決める。さすがはNHK、抜群の安定感です。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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