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7/27放送 TBS系『駆け込みドクター!』から
駆け込みDr◆デジタル認知症? 何じゃそりゃ

2014/08/05

 7月下旬は、めぼしい健康番組の放送がありませんでしたので、少し期間を広げてチェックしてみました。夏休みに入ったせいか、病気というよりも、身近な健康管理に関する内容が多いようでしたが、そんな中、『駆け込みドクター!』が認知症をテーマに2時間のスペシャルを放映していました。

 番組冒頭は、定番の統計データの紹介から。日本の認知症患者は推定462万人もいて、「認知症は高齢者の4人に1人が罹る身近な疾患なんです」と解説していました。

 しかしですね、この462万人という推定数字、厚生労働科学研究の結果からの引用だと思われるんですが、ここには「軽症者を含めた日本の高齢者の認知症有病率は15%」と書かれています。念のため、総務省統計局のデータも調べてみましたが、「65歳以上の高齢者人口は3186万人」とありまして、この数字を使って462万人を計算しても、やはり15%に相当します。厚生労働科学研究では、15%と3186万人という数字を使って、462万人という数字をはじき出した、と言った方が正確なのかもしれません。

 にも関わらず、どこから「25%」という、“盛り”気味の数字が出てきちゃったんでしょう。少し調べてみましたが、ソースがよく分かりませんでした。総務省の報告では、2013年現在、「65歳以上の高齢者人口が総人口に占める割合は25.0%」という文面もありましたが、まさか、そちらと取り違えたとか?

 番組では次に、3大認知症ということで「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」の概要を紹介。認知症は早期発見、早期治療が大事ということで、さっそく代表的な初期症状を解説していきます。

 初期症状としては、怒りっぽくなるとか、モノをどこに置いたか忘れるとか、誰にでも当てはまりそうなことばかりを紹介。司会者が「思い当たるんじゃない?」とゲストを一通りいじったところで、立体模写や時計模写のテストを紹介していきます。テレビ番組を使った軽症認知症患者の拾い上げという目的に照らせば、多少はあおり気味でもいいのかもしれませんが、この夏、もしかして全国の医療機関に「私、認知症じゃありませんか」と主張する自称認知症患者が殺到しているのではないかと心配です。

 続いて出てきたのが「デジタル認知症」。これ、スマホなどの電子機器に依存することで、記憶力や集中力が低下する状態のことを指すようです。代表的な症状は、スマホに頼ってしまって電話番号が思い出せないとか、漢字が書けなくなるとか。

 いやー、そりゃないでしょ。記憶できないんじゃなくて、記憶しようとしてないわけですから。それで覚えていないからって、あなた認知症ですって言われましても……。私、携帯がない時代から、電話番号を手書きで手帳にどっさりメモしてましたけど、手帳にたよりすぎて電話番号を覚えていないのは「手書きメモ認知症」いや「アナログ認知症」とでも言うんでしょうか。

 そもそも、これに「認知症」という病名を当てはめるのはおかしい。番組の中では医師が、デジタル認知症が「3年も5年も続くと、本物の認知症につながっていく可能性がある」とコメントしてました。このコメント内容にも耳を疑いましたが、よく考えると「デジタル認知症は、本物の認知症につながる可能性がある」ってことは、デジタル認知症は本物の認知症じゃないってことを宣言しているわけですよね。当たり前ですが。だったら、認知症って病名を使うの、やめましょうよ。

 さらに、わけがわからないのが、このコーナーの最後は「アルツハイマー病の予防は手と頭を同時に動かすことが効果的」なんて締めてるんですが、あれ? スマホって、メールしたり、ゲームをしたり、調べ物をしたりで、存分に手と頭を同時に使ってませんか。結局、スマホは認知症にいいの? 悪いの? 結論がよくわかりません。ヤレヤレ。

 という非科学的な話題の後は、脳年齢テストや食生活による認知症の予防、認知症の徘徊に関する話題を挟みまして、「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」の解説です。レビー小体型認知症では罹患者の80%にはっきりとした幻視が現れるとか、夏場は脱水で脳梗塞が起こりやすいから要注意なんて、ちゃんとした医学の解説が続きます。でも、先ほどのデジタル認知症の後では、どうも勉強に身が入りません。

 最後に取り上げられたのが「治る認知症」ということで「慢性硬膜下血腫」です。特に高齢者で、急に認知障害が始まったら、外傷の既往がなくても慢性硬膜下血腫を疑う必要あり、と。医療関係者には基本と言えば基本でしょうが、慢性硬膜下血腫による認知障害がテレビで取り上げられることは少ないように思うので、このコーナー(だけ)は視聴者へのよい情報提供になったのではないかと思います。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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