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総合診療医 ドクターG(7/4 22:00~、NHK)から
ドクターG◆「うちじゃない科」になるべからず

2014/07/10

 先週から7月の番組改編期に入ったせいで、レギュラーの健康番組の多くがお休みでしたが、久しぶりに『総合診療医 ドクターG』のオンエアがありましたので、今回は、この番組を取り上げてみます。7/4放送回のプレゼンテーターは、救急医である福井大病院総合診療部の林寛之氏でした。

 ご存じの方も多いかと思いますが、『ドクターG』という番組は、プレゼンテーターが症例を提示し、若手医師(研修医)3人がその患者の病名を推測するという医学エンターテインメントです。この番組では、プレゼンテーターをドクターGと呼んでいます。症例提示は、役者さんが出演する再現VTRで行われ、少しずつ情報が提示されていきます。検査値や診断用画像こそほとんど提示されませんが、研修医を対象にした院内カンファレンスに近い構成になっています。

 今回は、自分が救急外来を担当しているときにこんな患者が来たらどうする? という設定。「腰がものすごく痛い」と言って、自分でタクシーに乗って救急外来にやってきた38歳の女性患者についてディスカッションしていきます。

 番組では、かなり早い段階で、大動脈解離を除外しました。日本循環器学会の「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」(2011年改訂版)でも、日本における大動脈解離および大動脈瘤は「10万人あたりの年間発症人数はおよそ3人前後と思われる」と書かれており、さほど珍しい病気ではありません。激しい腰痛を訴える患者では、まずは除外しなければならない疾患の一つです。ガイドラインでは、初期診断ではハンディな経胸壁心エコー検査が非常に有用であることが紹介されており、番組内でもエコーで除外診断をしていました。

 ちなみに、同じNHKで2012年2月に放送された『ためしてガッテン』(NHK)では、「死に至る腰痛があった」として、大動脈解離、腹部大動脈瘤が取り上げられていました。今回も主訴が「激しい腰痛」と聞き、「大動脈解離だ!」と思ったのですが、さすがに違うようでした……。

 続いて、子宮外妊娠については、問診であっさり除外。その後の再現ドラマでは、患者さんの勤める広告代理店での仕事の描写が続き、ストレスが多く寝不足である様子がアピールされます。そして受診の前の晩、面倒を見ていた後輩のお祝いの飲み会があり、そこで酔いつぶれた後輩を介抱しようとして一緒に転んでしまい、そのときに患者は腰をひねりました。そのとき、「ゴツッ」という音がしたような気がしたとのこと。後で触れますが、これ、トラップです。

 この段階で、再現VTRから疑われる疾患を3人の研修医が挙げました。挙がった疾患は、「椎体硬膜外血腫」「急性膵炎」「腰椎圧迫骨折」。いつものことですが、不思議なほどに、きれいに答えが分かれます。ここでドクターGが解説。椎体硬膜外血腫や急性膵炎は、前日の頸部痛、後頭部痛が説明できないので除外。腰椎圧迫骨折も、年齢からして、癌の骨転移がないと考えにくいとのことで否定されました。

 続く再現ドラマでは、お見舞いに来た後輩が頭にコブを作っていたというシーンが出てきます。なんと、先ほどの「ゴツッ」という音は、転んだ後輩が頭をぶつけた音だったらしいのです。なんと紛らわしい。ゲストの平岳大さんも苦笑いしていました。

 現実の診療でも、実際には症状に関係ないエピソードを患者さんが鮮明に記憶していて、診断の障害になるということはしばしばあることなのでしょう。いつも『ドクターG』の再現ドラマに、誤診を誘うようなトラップが満載なのも、ある意味ではリアルなのかもしれませんが、今回のはさすがにちょっと……。もしかして、研修医の回答をばらつかせたり、間違えさせることを狙っているのではないか、と勘ぐってしまいます。まあ、エンタテインメント番組なのですから、「おいおい、そりゃないよ」と笑って流すところなのでしょうけど。

 そして、番組終盤。先ほどまでさりげなく扱われていた後頭部痛がクローズアップされてきます。さあ、研修医のみなさんは、どんな検査をする? ということでCTがオーダーされましたが、検査まで少し時間があるのでケルニッヒ徴候を診てみました。って、先にケルニッヒ徴候を診るべきだったんでは。しかも、しっかり陽性ですし。

 無事に「クモ膜下出血」の診断がついたところで、ドクターGから研修医にメッセージ。「自分の専門ではない」という、いわゆる「うちじゃない科」にはなってほしくない。ありがたいお言葉で、番組は和やかに締めくくられたのでした。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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