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ためしてガッテン(6/18 20時~、NHK)から
膝の痛みには「木綿の靴下」が効くらしい

2014/06/25

 膝関節痛は、高齢者によく見られる症状の一つで、患者数は1000万人を超えるとも言われています。そうした患者をターゲットにした、グルコサミンやコンドロイチンなどの健康食品が流行っていますね。あんな高分子を経口摂取して、本当に関節痛に効果があるのだろうかとはなはだ疑問ではありますが、それはまた別の機会に取り上げるとして……。

 先週のNHK「ためしてガッテン」(6/18放送)では、そんな膝関節痛の新しい解消法を紹介していました。ガッテンでは、過去にも膝関節痛を取り上げていて、そのときは「足を動かす運動」を紹介していました。でも、膝が痛いのに運動しろと言われても続けられないでしょう、ということで、この日は運動ではない「革新ワザ」3連発だそうです。

 革新ワザ、一つ目は「木綿の靴下を1日6分履いて座るだけで痛みがよくなる」というもの。ほうほう、ナイロンじゃなくて、シルクじゃなくて、木綿だと。木綿の靴下をはいて、3分じゃなくて、10分じゃなくて、6分なんだと。ほうほう。

 特に自分が膝の痛みを感じているわけではないものの、「靴下が効く」というのが新鮮で、どんなロジックなのか興味津々で番組を見ました。そのココロは「木綿の靴下を履いて、床の上で足をスライドさせる」という“革新ワザ”でした。いわゆる関節の可動域訓練ですね。

 患者自らが行う可動域訓練については、日本整形外科学会が発行している「変形性ひざ関節症の運動療法」のパンフレット(PDF版)でも以前から紹介されています。パンフレットで紹介しているのは、足の下にタオルをおいて床をすべらせるという方法。NHKとしては、タオルを木綿の靴下に置き換えて“革新ワザ”に仕立て上げた、ということのようです。で、なぜ木綿なのかは、全く説明がありませんでした。残念。

 しかも、番組冒頭で運動以外のワザを紹介するって宣言していたのに、いきなり一発目から、運動を紹介しているというのが謎です。番組のコメンテーターも「座るだけなのだけど、動かします」と、ツッコミを入れていました。

 二つ目は、変形性膝関節症ではなく、「ひざのコリ」です。一つ目と三つ目の革新ワザは変形性膝関節症なのに、二つ目に「ひざのコリ」を挟んだ意味がわかりません。革新ワザが3つなかったので、無理矢理に入れ込んだんでしょうか。

 で、これは膝関節周囲組織由来の痛みの治療法を紹介しているようです。膝蓋骨を8方向に移動させて疼痛が誘発される場合に、膝関節周囲組織由来の痛みが疑われます。筋腱付着部の線維化と痛覚閾値の低下が原因とされています。

 このタイプの膝の痛みは、膝蓋骨周囲の筋腱膜や小靭帯をストレッチすることで靭帯や筋の拘縮が除去されて痛みが緩和します。1回約3分、ストレッチをすれば効果がありますから、テレビで紹介するのにはもってこいですね。しかし、番組内でもそうでしたが、素人ではうまく膝を押せないこともあるそうです。

 最後の三つ目は、変形性膝関節症に戻りまして、高位脛骨骨切り術の紹介です。日本整形外科学会「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告 OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン」(関連記事)では、「身体活動性が高く、内側膝OAによる症状が著しい若年患者では高位脛骨骨切り術の施行により関節置換術の適応を10年遅らせることができる場合がある」と書かれています。エビデンスレベルは、IIb(少なくとも1件の十分にデザインされた準実験的研究)です。

 気になったのは、ガイドラインでは「若年患者」の高位脛骨骨切り術を評価していること。対して、今回のガッテンで紹介されたのは、70歳の車いすを使っていた方に骨切り術を施術して走ることができるようになったという事例でした。もちろん、高齢の患者さんでも、適応のあるケースはあるのでしょうけど。

 膝に痛みのある高齢患者から「私も骨切り術をすれば走れるようになりますか」と詰め寄られたりしていませんか。それ、間違いなく「ガッテン」効果です。

著者プロフィール

くめ やすはる(薬剤師)●粂康晴氏。京都大学薬学部卒。大手製薬会社に20年以上勤務し、MR、研究開発、内部監査などを経験後に退社。糖質オフにこだわるレストラン「カーボオフ」を埼玉県の大宮にオープンした。

連載の紹介

くめやすはるの「健康番組タメツスガメツ」
テレビの健康番組にあおられて「私もこの病気じゃないかしら」と外来に押し寄せる患者たち。今週、テレビでどんなトンデモな健康番組が放映されたのかを、患者への説明に役立つ小ネタとともに、ご紹介します。

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