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院外処方やめました

2014/07/08

 今回が連載第2回となるため、私もオンラインに載った第1回の記事を読むことができる。なんとコラムのタイトルが「赤穂の風雲児 古城資久の急性期病院血風録」となっている。こんなの聞いてないよ(契約書には書いてあったらしい)。赤穂は塩の名産地で雨が少ないことで有名。従って風も雲もありません。私が経営する病院6件のうち全床急性期は東京の救急病院と姫路の産婦人科病院だけで残る4病院はケアミックスやリハビリ病院である。血風録ってチャンバラじゃないし。まあキャッチコピーまで口出しするのは野暮なので、もういいですが…。

 今回のお題は「院外処方やめました」。まず院外処方に関する最近のトピックスから。

調剤薬局はそれほどもうかるの?
 昨年、兵庫県の山間地にある2つの市民病院が統廃合し、山間地のそのまた郊外に1つの病院として移転開業した。そこで院外薬局向けの土地二筆(各260m2)を市が売りに出したところ、10億円と4億2000万円で大手調剤チェーンに落札されたそうだ。

 坪単価は10億円/260(m2)×3.3=1270万円である。隣接する病院用地は9万m2で13億9000万円だったそうで、坪単価は13.9億円/9万(m2)×3.3=5万1000円となる。病院用地が5万1000円/坪で隣地の薬局用地が1270万円/坪とはナント250倍である。病院は路線価と実売価格から価格決定しており、調剤薬局の土地は競争入札ではあるが調剤薬局って病院とは比べ物にならないくらいもうかるんですねえ。以下は妄想に近い試算だが、「血風録」の題名に免じてご容赦を。

 この病院の外来患者は1000人/日を想定しているそうだ。すると処方枚数は800枚くらいかと思われる。処方箋単価はせいぜい1万円くらいだろう。土地代10億円側の調剤薬局が貰える処方箋が400枚?そこまで行くかな?外来診療日数は年間250日だから、1万円×400(枚)×250(日)=10億円で大した売上とは思えない。一緒にドリンク剤やテッシュを売っても年商11億円が限度では。

 調剤薬局の建物はお金がかかっていないから減価償却費は年間1000万円くらいか(39年の償却で建築代金3億9000万円)。機械設備は損金算入できるリースで行くはずだ。

 建築物は償却できるが、資金の寝る土地代10億円を何年で回収するか。さらに勝手な想像だが、大手調剤チェーンは上場しているところが多く、10年くらいで回収できなければ株主の納得は得られないだろう。すると1億円のキャッシュフローが欲しい。それならば経常利益1.6億円、税引き後利益9000万円を確保する必要がある。

 経常利益率は1.6億円/11億円=14.5%になる。土地の投資回収がいらない店舗ならこれ以下の利益率でもよいだろうが、10億円の資金をいきなり土地にブチ込むならこのくらいないと商売としては旨みがないだろう。

 当然仕入れ代も、販管費も、人件費も、消費税損税もあるのにそんなに利益が出せるのだろうか。病院に比べ原価率が高く付加価値が低い調剤薬局がこれほどもうかるのだとすれば、厚労省の処方した院外処方誘導への薬が効きすぎているのでは。

 調剤大手の日本調剤の2013年度の売り上げは1650億円で社長の役員報酬は6億8000万円であった。売り上げ25兆7000億円のトヨタ自動車・創業家出身社長、豊田章男氏の年棒が1億8400万円だから調剤薬局は悪くない商売なのだろう。

院外処方は患者に評判が悪い?
 いまから30年余り前、薬漬け医療が医療費の高騰の原因と言われ医薬分業がスタートした。当時は薬価が高く、仕入れの割引率が良く、薬を出すほど病院がもうかっていた。半値8掛け2割引にもう1箱オマケの時代である。当時は薬クソ売と言われていた。9層に利益が乗っていることを皮肉った表現だった。その後相次ぐ薬価の引き下げと、薬剤師の求人難で医療機関は院内調剤を次々と止めて行き、今では70%が院外調剤らしい。気が付くといつのまにか病院は経営困難になり、調剤薬局だけが繁栄する時代になった。

 われわれ伯鳳会グループでも処方箋料が上がり、院外処方の方が一見もうかりそうになった今から16~17年ほど前に先代が院外処方に切り替えようとしたが、私が必死で止めた。なぜなら我々病院はサービス業だから。目先のおカネに目がくらんで、サービス低下を来たしては将来があるはずがない。患者さんにとってはワンストップサービスでコストの安い院内処方が良いに決まっている。二度手間で、時間がかかって、オマケに高い調剤薬局を患者さんが好むと考えるほうがどうかしている。

 院外処方は病院での薬剤管理が不要になるという意見もあるが、病院薬剤師のコア業務を外注するなど言語道断。複数の医療機関を受診する患者の服薬管理の容易さも、患者さんがかかりつけ薬局にしか行かないという前提条件があるうえ、実は過渡的なものに過ぎない。厚労省の進めるカルテ一元化が完了すれば、お金がかかると評判の悪い「お薬手帳」によるアナクロな薬剤管理は昔話になるだろう。

 われわれは事業を拡大し、薬品の取扱量を増やしバイイングパワーを上げ、問屋との価格交渉ができるように長年努力している。われわれのグループは最近M&Aで傘下とした東京を除き、全て院内処方である。赤穂は最初から院外には出さなかったが、M&A前は院外処方だった明石も姫路も大阪も全て院内に切り替えた。こうして伯鳳会グループの薬品購入額は年間30億円近くになり、価格交渉の上でのスケールメリットも出てきたようだ。

 大阪は2012年12月に院内処方に切り替えてから外来数が増えてきた。院内処方切り替え1年後に患者さんへのアンケートを取ったが「院内調剤が病院を選ぶ選択肢になるか」に対し「はい」が44%、「いいえ」が27%。「今後も院内調剤を望むか」については「はい」が93%、「いいえ」が5%と院内調剤継続を望む声が圧倒的であった。また患者さんの44%が病院を選択する上で院内処方であることを考慮すると答えているが、処方の様式だけでこれほどの集患インセンティブになるとは、予想以上の効果であった。

著者プロフィール

古城資久(医療法人伯鳳会 赤穂中央病院代表者、理事長)〇こじょうもとひさ氏1958年岡山県生まれ。84年日大医学部卒業後、岡山大第2外科に入局。93年赤穂中央病院勤務、2001年伯鳳会理事長。大阪暁明館病院、東京の白鬚橋病院などの経営を継承し、グループの総ベッド数は1115床に。趣味はベンチプレスで、世界マスターズベンチプレス選手権で4回優勝し、世界新記録を1度樹立している。

連載の紹介

赤穂の風雲児 古城資久の急性期病院血風録
兵庫県の赤穂中央病院(265床)を拠点に、大阪府や東京都内でも医療・介護事業を拡大してきた伯鳳会グループ。その事業展開に加え病院運営面の改革でも注目を集めている理事長の古城資久氏が、自らの取り組みのほか、制度改革の荒波に揉まれる急性期病院の「今後」について語ります。

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