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第11回 努力している患者をどんな言葉で励ますか
医師は患者をほめてはいけない

2020/09/08
岸見 一郎

 これまで、医師と患者というのは立場が違うだけであって、対等の関係であることを指摘してきました。医師は患者の回復を援助するだけで、優位に立つわけではありません。

 この医師と患者との対等な関係において、医師は患者が見下されていると感じるような言動をしてはいけない、つまり、医師の指示を守らなかったからといって患者を責めたり、まして頭ごなしに叱りつけてはいけないということは、実践できるかは措いておくとしても、ひと頃よりもずいぶんと理解してもらえるようになってきました。

 しかし、「医師と患者は対等である」ということの意味が本当に理解されているかといえば、そうとはいえないように思います。叱ってはいけないという人でも、患者をほめるのはいいのではないかと問う人、さらには、ほめることは必要とまでいう人がいるからです。ほめて伸ばすという考えは、今もまだ常識のように見えます。臨床の場面では、ことに患者が子どもや高齢者であれば、ほめる医師を見ることは多かったのです。

著者プロフィール

岸見 一郎●きしみ いちろう氏。1956年京都生まれ、京都在住。1987年京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。専門である西洋古代哲学と並行して、アドラー心理学を研究。2013年に古賀史健氏との共著で刊行した『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)は、200万部に迫るベストセラーに。精力的に執筆・講演活動を行っており、著書に『アドラー心理学入門』『幸せになる勇気』など多数。

連載の紹介

岸見一郎の「患者と共に歩む心構え」
こんな時、患者にどう向き合えばよいのか。患者の思いをどのように受け止め、どんな言葉を掛けるのか――。日常診療の中で直面する様々な場面において、対等な人間として患者と「共に歩む」ための心構えを、哲学者でありアドラー心理学を解説したベストセラー『嫌われる勇気』の著者である岸見一郎氏が、医療機関でのカウンセラーとしての経歴や、心筋梗塞治療を受けた患者としての経験なども交えつつ解きほぐしていきます。

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