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「コロナ疑い」で搬送を30回断られる今思うこと

2021/09/02
木川 英(川越救急クリニック)

 新型コロナウイルスに感染してしばらく療養していた当院院長(関連記事:スタッフの陽性で救クリがまさかの2週間休診に)がついに復活し、救クリがしばらくぶりに再開しました。2週間以上休診していたのが嘘のように、連日連夜患者さんが受診されています。

 前回の記事で、次は院長との対談をお届けする予定としていましたが、その前に割り込ませてでもお伝えしたいことがあります。8月下旬の首都圏では、必要な時に必要な医療を受けられる状態を維持できなくなってしまいました。救クリの周辺での印象としては、もはや医療逼迫や災害級といった域を超えています。薬師寺泰匡先生も連載で医療の逼迫状況をリポートされていましたが(関連記事:救急車が来ない世界、コロナに合併する疾患、難渋する治療)、私からも現況をお伝えしたいと思います。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はどの医療機関でも治療できるわけではありませんし、どの医師でも診ることのできる疾患ではありません。感染症専門医の先生はもちろん最前線で活躍されていますが、絶対数が少な過ぎます。多くの医療機関で総合内科医や救急医が対応していると思いますが、それも少ない。そして、そうした医師をチームで支えるための看護師や臨床工学技士も当然誰でもいいわけではなく、経験や技術を持っている必要があります。

 病床を増やせとか入院患者を受けろといった主張もなされていますが、それ以前に、COVID-19患者を診ることのできる医療スタッフの数が足りないために限界に達していることを、現場から発信すべきだと思っています。これまでも、地域の最後の砦を担う医療機関が「頑張る」ことで危機を乗り越えてきましたが、今回はその「頑張り」も限界を超えています。一部の医療機関におんぶにだっこの状態で、そこに頼り続けるのも不可能な状況になっていると思います。過去にも医療崩壊に関する内容に触れてきましたが(関連記事:その救急車要請、本当に必要ですか?今、我々は医療崩壊のど真ん中にいます)が、それをはるかに上回る状況になってしまいました。

著者プロフィール

木川英(川越救急クリニック副院長)●きがわ あきら氏。2005年東海大学医学部卒。茅ケ崎徳洲会総合病院(現:湘南藤沢徳洲会病院)初期研修医を経て、08年救急医を志し八戸市立市民病院救命救急センターに勤務。13年から現職。

連載の紹介

木川英の「救急クリニック24時」
全国有数の”救急過疎地”サイタマに開業した救急専門の診療所に助っ人としてやって来た木川氏が、現場で感じた地域医療の問題、患者側の問題、医療経営の問題等々を綴ることで医療界に一石を投じる。

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