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高次医療機関との連携の必要性を痛感した一例

2017/06/12
木川 英(川越救急クリニック)

 先ごろ気象庁が、四国から関東まで広範囲で梅雨入りしたと発表しました。自転車通勤の私にとっては、雨が降ると家族に無理言って車を借りることになり少々面倒です。

 車で行くにせよ自転車で行くにせよ、雨の日は交通事故に気を付けなければいけませんが、埼玉県の交通事故死者数は現在、全国ワースト1です。言葉で交通安全と言うのは簡単ですが、実践するのは難しいですね。

 こういう話題で思い出す症例がありますので、今回はそれを紹介します。

救急隊 患者の受け入れ要請です。

木川 はい。どのような患者さんでしょうか。

救急隊 13歳の男子中学生で、主訴は意識消失です。昨日、遠方で交通事故に遭い受傷し、病院に搬送されましたが、異常はなく帰宅されたようです。その後、腹痛が増悪して歩行中に意識を失ったため救急車を要請されました。

木川 現在の状態は? 意識を消失した時の外傷はありますか。

救急隊 現在は血圧116/46mmHg、脈拍数114回/分、呼吸数18回/分、SpO2 100%(room air) 、体温35.0℃、意識レベルGCS(Glascow coma scale)E4V5M6で腹部全体に痛みがあります。その他の外傷はありません。

木川 冷や汗や吐き気などの症状はあるのでしょうか。

救急隊 意識消失する前に冷や汗があったようですが、現在はそのような症状はありません。

木川 どこの病院でどのような検査をされたのでしょうか。

救急隊 A病院というところですが、詳細は不明です。

木川 分かりました。A病院に聞いてみますので、受け入れOKです。

救急隊 ありがとうございます、15分くらいで行けます。

(A病院に問い合わせ)

木川 埼玉県の川越救急クリニックの木川と申します。昨日、貴院を受診されたZさんという方のことをお聞きしたいのですが……。

A病院 はい。当院の近くで横断歩道を歩行中に乗用車と接触して転倒したとのことで、当院を受診されております。症状はそこまで強くなく、念のため血液検査、超音波検査および腹部造影CT検査しましたが、異常所見はありませんでしたので、腹部打撲傷として帰宅としました。何かありましたか。

木川 ありがとうございます。腹痛が強くなったとのことで救急車を要請され、もう少しで当院に搬送されます。

A病院 そうでしたか……。昨日のデータをお送りしますので、よろしくお願いいたします。

木川 はい。ありがとうございます。

(資料を確認し、確かに異常はなさそうだった)

 救急隊到着。

木川 Zさん、こんばんは。大丈夫ですか。

Z おなかが痛いです。

木川 どこが痛いですか。

Z 全体的に痛いです。

木川 腹部全体に圧痛があります。エコーするよ!

著者プロフィール

木川英(川越救急クリニック副院長)●きがわ あきら氏。2005年東海大学医学部卒。茅ケ崎徳洲会総合病院(現:湘南藤沢徳洲会病院)初期研修医を経て、08年救急医を志し八戸市立市民病院救命救急センターに勤務。13年から現職。

連載の紹介

木川英の「救急クリニック24時」
全国有数の”救急過疎地”サイタマに開業した救急専門の診療所に助っ人としてやって来た木川氏が、現場で感じた地域医療の問題、患者側の問題、医療経営の問題等々を綴ることで医療界に一石を投じる。

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