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救クリにも来た失神患者の意外な原因

2016/09/12
木川 英(川越救急クリニック)

 ブラジル・リオデジャネイロではオリンピックに続き、パラリンピックが開幕しましたね。オリンピックでは、日本代表の選手が懸命に競技して結果を出している姿にただただ感動しました。

 夜間専門診療所に勤務し、昼間寝て夜間起きている身としてはリオとの時差は“ゼロ”。深夜に患者さんが来ない時間はひたすらテレビ観戦していました。

 その合間にたまたま近くに置いてあった日経メディカル8月号をめくっていたところ、失神についての特集(失神患者を脳外科に送るな!)が目に留まりました。

 筆者もこの前、似たような事例を経験しましたので紹介いたします。

 救急車での来院ではなく、通常の外来時間内に受診された方でした。

 問診票には、50歳女性、主訴:気分不快とだけ書いてある。早速、診察室に呼び入れる。

 夫と入室された(その瞬間から診察は始まっている。パッと見た感じは少し顔色が悪い程度か……)。

木川 木川です。今日はどうされましたか。

患者 だるくて、気分が悪いんです。

木川 いつから、どんなふうに気分が悪いのでしょうか。

患者 昨日の朝から体に力が入らないというか、何となく気だるいので、寝ていたんです。それで、今日の朝になっても変わらないので近所の総合病院に行きました(ちらっと夫を見る)。

患者の夫 実は、妻が深夜にトイレに行くと言ってトイレに行った後に部屋に戻ってきた時に、急に倒れて気を失ったように見えました。呼び掛けても反応がなかったのですが、15〜20秒たった後くらいでしょうか、徐々に意識が回復してきたので安心してそのまま寝かせました。朝になると取りあえず、気分は悪そうでしたが、意識もしっかりしていましたし、歩けましたので、一緒に病院へ行きました。

木川 なるほど。その病院では何をされましたか。

患者 はい。夫が受付でその話をしたところ、脳外科受診となりまして、先生にも同じような話をしたところ、血液検査、頭部CT検査、MRI検査を受けました。結果、特に大きな異常はないので様子を見てくださいと言われました。でも、夜になっても気分が良くならないので、こちらに来ました。

木川 そうでしたか。その病院では何という診断だったんでしょうか。

患者 特に、病名は言われませんでした。

木川 「失神」といった言葉が医者から出ませんでしたか。

患者 特に聞いていません。

木川 「一過性脳虚血発作」「TIA」とかは?

患者の夫 そうそう、それは言っていました。一時的な脳梗塞みたいなものかもしれないとは言われましたが、取りあえず様子を見ましょうと。

木川 やはり…(いまだに失神=TIAみたいな図式でいる医者はいるんだな)。了解いたしました。それでは、改めて質問します。今まで、大きな病気を患ったことや持病はありますか。

患者 特にありません。

木川 普段服用している薬もないですね。

患者 ありません。

木川 食欲がなくなったのは昨日からですか。

著者プロフィール

木川英(川越救急クリニック副院長)●きがわ あきら氏。2005年東海大学医学部卒。茅ケ崎徳洲会総合病院(現:湘南藤沢徳洲会病院)初期研修医を経て、08年救急医を志し八戸市立市民病院救命救急センターに勤務。13年から現職。

連載の紹介

木川英の「救急クリニック24時」
全国有数の”救急過疎地”サイタマに開業した救急専門の診療所に助っ人としてやって来た木川氏が、現場で感じた地域医療の問題、患者側の問題、医療経営の問題等々を綴ることで医療界に一石を投じる。

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