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第111回 レビー小体型認知症診療を再考する(3)
レビー型認知症への薬物療法をどう進めるか

2018/02/09

 今回は、レビー小体型認知症の薬物療法について臨床診断基準第4版での記載と、私の実体験を基に考えてみたいと思います。

臨床診断基準第4版における薬物療法
 中核症状に関する記述は非常に簡潔になっています。メタ解析の結果からは、リバスチグミンとドネペジルの使用は認知機能や全般性機能、日常生活動作を改善し、さらに改善が見られなくても、服薬している限り、悪化することは少ないとされています。メマンチンのレビー小体型認知症に対する効果は明らかではないようですが、忍容性は担保され、単独あるいは併用療法で効果を期待できるかもしれないと記載されています。ガランタミンに関してはこの診断基準では全く言及されていません。

 行動障害・精神症状(BPSD)に関しての記載を以下に列挙します。
(1)コリンエステラーゼ阻害薬は、アパシー(無為・無関心)と幻視、妄想に対して、かなりの改善や軽減を期待できる。
(2)不安と焦燥性興奮(agitation)は、精神病症状(幻覚・妄想)を背景に派生していることが多いので、コリンエステラーゼ阻害薬による二次的な効果が期待できるかもしれない。
(3)BPSDに対する抗精神病薬の使用は死亡率の増加に関係しており薬剤過敏性の点からも可能な限り使用は避けなければならない。
(4)低用量のクエチアピンが他の抗精神病薬よりも相対的に安全であり、広く使用されている。しかし、少数例を対象としたプラセボ対照臨床試験では効果は否定的であった。
(5)パーキンソン病の精神病症状に対して、クロザピンの有効性を示すデータは見られるが、レビー小体型認知症への効果や忍容性は確立されていない。
(6)うつ状態に対する薬物療法のデータは乏しい。


 要するにレビー小体型認知症に使用すべきあるいは使用できる薬剤としてはコリンエステラーゼ阻害薬の中でドネペジル(商品名アリセプト)とリバスチグミン(リバスタッチ、イクセロン)、非定型抗精神病薬のクエチアピン(セロクエル、ビプレッソ他)ということになります。ただし、わが国では、リバスチグミンはレビー小体型認知症に対して保険適応はありません。クエチアピンも同様に、レビー小体型認知症に適応はありませんが、以下の通達がなされていることを知っておく必要があります。

 2011 年の社会保険診療報酬支払基金、第9次情報提供によって、ハロペリドール、クエチアピン、ペロスピロン、リスペリドンについては、「『器質的疾患に伴うせん妄・精神運動性興奮・易怒性』に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」と通達されています。例えば、レビー小体型認知症で見られる暴力行為にリスペリドンを使用した際には、保険病名として、レビー小体型認知症とレビー小体型認知症に伴う精神運動性興奮を併記すればよいことになります。また、同通達でリスペリドンは、「パーキンソン病に伴う幻覚」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認めることも併せて記載されています。さらに2012年の第10次提供事例では、原則としてクエチアピンを「『パーキンソン病に伴う幻覚、妄想、せん妄等の精神病症状』に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」ことも通達されています。通達ではパーキンソン病となっていますが、レビー小体型認知症も含まれるのかは微妙なところで、確定的なことは分かりません。

 運動障害(パーキンソン症状)に対するドパミン補充療法は、パーキンソン病に比べ、しばしば反応性に乏しく、逆に精神病症状を惹起する危険性を持ちます。患者によっては、少量のレボドパ製剤が運動障害の改善をもたらすこともあるとされています。

 レム睡眠行動障害には就寝前のクロナゼパム服薬の効果が期待できますが、認知機能の悪化と歩行障害の発現に注意すべきであると記載されています。

著者プロフィール

川畑信也(八千代病院〔愛知県安城市〕神経内科部長)●かわばた のぶや氏。1979年昭和大医学部卒。国立循環器病センター、秋田県立脳血管研究センター、成田記念病院〔愛知県豊橋市〕を経て2008年より現職。愛知県認知症疾患医療センターセンター長も兼任。

連載の紹介

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