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第56回 アルツハイマー型認知症の薬物療法を再考する(3)
アルツハイマー型認知症の易怒性をどうする?

2015/10/16

 アルツハイマー型認知症では、怒りっぽいこと(易怒性)が特徴の1つともいえます。筆者が開設するもの忘れ外来にて初診アルツハイマー型認知症患者さんの症状を分析した結果では、初診患者さんの44%で易怒性が認められることが明らかになっています。さらにアルツハイマー型認知症の臨床経過に伴い、易怒性や暴言などが新たに出現あるいは増悪することもしばしば経験します。易怒性が軽度ならば介護家族が病態を正しく理解し、傾聴や適切な接し方などを行うことで対応は可能になるかと思います。しかし、易怒性が進み家族の精神的負担が大きい場合には、必要に応じて薬物療法を導入せざるを得ません。今回は、易怒性あるいは暴言を吐くアルツハイマー型認知症に対する薬物療法について考えていきます。

易怒性に対する薬物療法の基本
 アルツハイマー型認知症でみられる易怒性あるいは暴言に対して有効性を期待できる薬剤は、抗認知症薬のメマンチン(商品名メマリー)あるいは抗てんかん薬、抑肝散などの漢方薬、抗精神病薬のいずれかと思います。筆者は、今までいずれの薬剤も処方されていない事例には、認知症症状の進行抑制効果とともに易怒性の軽減も期待できるメマンチンを第一選択薬にするのがよいかと考えています。

 すでに抗認知症薬としてメマンチンの処方が開始されている事例には、抗てんかん薬かあるいは抗精神病薬のいずれかを考慮します。メマンチンに抑肝散を追加併用する選択肢でもよいと思いますが、メマンチンで易怒性の軽減を図れない事例には抑肝散を加えてもあまり効果を期待できないのではないかと個人的には考えています(メマンチンが上市される以前には、易怒性に対して抑肝散をしばしば使用していました。メマンチンが処方できるようになって以降は、抑肝散で効果を期待できる事例はほとんどメマンチンでカバーできることから、メマンチンが易怒性に対して効果を発揮できない事例では、抑肝散の効果も期待できないのではないかと考えています)。もちろんメマンチンと抑肝散とで相乗効果の可能性もあることからメマンチンにさらに抑肝散を追加することもよいかとは思います。

メマンチンの使用をまず考える
 メマンチンは、認知症症状の進行抑制効果とともに患者さんの行動や感情、言動の安定化をも期待できる薬剤といえます。初診で今までいずれの抗認知症薬も使用されていない事例では、抗認知症効果とともに易怒性や暴言を標的にメマンチンを第一選択薬にするとよいと思います。以下に事例を呈示します。

著者プロフィール

川畑信也(八千代病院〔愛知県安城市〕神経内科部長)●かわばた のぶや氏。1979年昭和大医学部卒。国立循環器病センター、秋田県立脳血管研究センター、成田記念病院〔愛知県豊橋市〕を経て2008年より現職。愛知県認知症疾患医療センターセンター長も兼任。

連載の紹介

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