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第51回 レビー小体型認知症診療を再考する
レビー小体型認知症と誤診していませんか

2015/08/07

 アリセプト(一般名ドネペジル)がレビー小体型認知症に適応拡大してから約1年が経過しました。この間の状況を見ると、レビー小体型認知症の診断があまりにも安直になされる傾向があると感じているのは、著者一人だけでしょうか。今回は、このレビー小体型認知症の診療について再度考えてみたいと思います。


レビー小体型認知症診療のピットフォール
 レビー小体型認知症は、変動性・動揺性を示す認知症症状が特徴の1つと言われていますが、その病態を慎重に吟味することなく安易に「変動性あり」と判断していないでしょうか。症状の変動性はレビー小体型認知症に特徴的ではありますが、この変動性だけでレビー小体型認知症と判断してはならないと思います。認知症の臨床診断はあくまでも病歴や問診、診察を含めた総合的な視点から判断すべきです。

 例えば、血管性認知症では感情の易変性がしばしば見られます。アルツハイマー型認知症でも夕方から夜にかけて落ち着きのなさや焦燥感を示す患者さんがいます。さらにアルツハイマー型認知症では、自発性の低下や意欲の減退、気分障害などが原因で元気がないように見えるときと、反対にとても活発に見えるときがあります。そのため、「症状が1日の中で変動することがありますか」と尋ねるだけでは、「症状に変動性がよく見られます」と家族が答えてしまう場合があるのではないかと推測されます。症状の変動性についてはより慎重に問診を行うべきでしょう。

 幻視も、アルツハイマー型認知症でしばしば見られます。「幻視」イコール「レビー小体型認知症」ではないのです。特にパーキンソン症状を認めない事例では、認知症症状と幻視のみで安易にレビー小体型認知症と診断すべきではないと思います。このような事例では、臨床像からの診断は極めて困難となるため、MIBG心筋シンチグラフィーなどの補助検査が必要になってきます。

 パーキンソン症状が存在しなかったり、臨床像から明らかに確認できない事例では、レビー小体型認知症の診断はより困難になります。レビー小体型認知症では、3割でパーキンソン症状が見られないとの報告もあります。パーキンソン症状を伴わないレビー小体型認知症の診断スキルを身につけておきたいものです。

 繰り返しになりますが、認知症の臨床診断は、病歴と問診・診察、画像検査を含めた総合的な視点から慎重に下すべきです。症状に変動があるから、幻視がみられるからと一側面を取らえただけでの診断は避けるべきであると思います。


ダットスキャンを過大評価してはならない!
 ダットスキャンがレビー小体型認知症の診断ツールとしてさかんに取り上げられていますが、私はこの検査を過大評価してはならないと考えています。

 ダットスキャンは、パーキンソン病の重症度にある程度相関すると言われています。その仮定に立つと、パーキンソン症状が見られないレビー小体型認知症では、ダットスキャンが健常型を示す可能性もあります。つまり、ダットスキャンでレビー小体型認知症が全て診断できるわけではないのです。

 私は、あたかもダットスキャンがレビー小体型認知症診断の救世主のように扱われている事実に違和感を感じています。脳画像検査は、認知症診療では補助検査に過ぎません。各画像検査で異常所見が見られない事例も存在することや、臨床像と画像検査の結果が一致しない事例も少なくないことを忘れないようにしたいものです。

 また、変動する認知症症状、幻視、パーキンソン症状といった中核徴候を全て揃える典型的なレビー小体型認知症に対して、検査費用が高価なダットスキャンを施行する意義は全くないでしょう。パンフレットには典型的なレビー小体型認知症のダットスキャンの画像が掲載されていますが、これは色彩の豊かな写真としてみれば楽しいかもしれませんが、ダットスキャンを施行された患者さんには何らメリットはないのです。

 アルツハイマー型認知症の場合もそうですが、レビー小体型認知症を診断する際にも時間をかけての病歴聴取と丁寧な問診・診察が基本であり、この段階で多くの患者さんの臨床診断は可能と考えます。さらに一見アルツハイマー型認知症あるいはレビー小体型認知症と思われる患者さんでも、頭蓋内に脳腫瘍や慢性硬膜下血腫など治療可能な認知症あるいは認知症と類似した病態が潜んでいる可能性を否定できないケースもあります。こういったケースでは、頭部CTスキャンあるいはMRI検査を施行すれば十分事足りるのではないでしょうか。

著者プロフィール

川畑信也(八千代病院〔愛知県安城市〕神経内科部長)●かわばた のぶや氏。1979年昭和大医学部卒。国立循環器病センター、秋田県立脳血管研究センター、成田記念病院〔愛知県豊橋市〕を経て2008年より現職。愛知県認知症疾患医療センターセンター長も兼任。

連載の紹介

プライマリケア医のための認知症診療講座
2020年、患者数が325万人に達するといわれる認知症。患者数の増加に伴い、認知症の診療におけるプライマリケア医の役割が大きくなっています。著者が遭遇した実際の症例を紹介しながら、認知症診療の「いろは」を解説します。
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