日経メディカルのロゴ画像

第15回 周辺症状に対する抗精神病薬の処方手順と注意点
認知症診療で抗精神病薬を上手に使いこなす

2014/02/07

 抗精神病薬と聞くと、第一世代の定型抗精神病薬であるハロペリドール(商品名:セレネース他)やクロルプロマジン(ウインタミン他)が高い有用性を持つ一方で、流涎や歩行障害、動作緩慢などの強い副作用を伴うことを思い出し、かかりつけ医の先生方の中には抗精神病薬の使用に躊躇する方も多いのではないでしょうか。しかしながら、認知症診療の中で周辺症状が目立つ患者さん、特に妄想や幻覚、暴力行為などが活発な患者さんには、どうしても抗精神病薬を使用せざるを得ない場合が少なくないと思われます。抗精神病薬を上手に使いこなすことができると認知症診療のスキルは格段に広がります。

 認知症診療で抗精神病薬を使用する際、利便性や薬効、副作用の観点から、非定型抗精神病薬と呼ばれる薬剤群を選択し使用するのが最もよいかと思います。認知症診療でしばしば使用される非定型抗精神病薬は、リスペリドン(リスパダール他)ならびにクエチアピン(セロクエル他)、オランザピン(ジプレキサ他)であろうかと思います。以下に事例を提示しながらその使用のコツを解説してきます。

リスペリドンの処方手順
 認知症診療で使用するリスペリドン処方の手順を図1に示しました。初回量として0.5 mgあるいは1 mgを夕食後あるいは就寝前の服薬から開始します。患者さんの状態を観察しながら0.5 mgずつ漸増していきます。1日最大量を2 mg前後に設定すると不都合な症状の出現はより少なくなるものと思われます。

(1)傾眠やふらつきが出現する危険性があるので可能な限り夕食後あるいは就寝前の服薬に限定することが重要です。

(2)嚥下障害や錐体外路徴候が他の非定型抗精神病薬に比して出現しやすいことから、服薬開始後の嚥下や運動機能に関して十分注意するようにしましょう。

(3)拒薬の患者さんに対しては液剤もあるので、みそ汁などに混入させて服薬させる選択肢も考えられます(事の是非は別にして)。しかし、液剤を使用する場合、茶葉抽出飲料(紅茶、烏龍茶、日本茶など)と混合すると反応が起きて含量が低下してしまうため、これらで希釈しないようにします。

著者プロフィール

川畑信也(八千代病院〔愛知県安城市〕神経内科部長)●かわばた のぶや氏。1979年昭和大医学部卒。国立循環器病センター、秋田県立脳血管研究センター、成田記念病院〔愛知県豊橋市〕を経て2008年より現職。愛知県認知症疾患医療センターセンター長も兼任。

連載の紹介

プライマリケア医のための認知症診療講座
2020年、患者数が325万人に達するといわれる認知症。患者数の増加に伴い、認知症の診療におけるプライマリケア医の役割が大きくなっています。著者が遭遇した実際の症例を紹介しながら、認知症診療の「いろは」を解説します。
この連載が本になりました!
『プライマリ・ケア医のための 認知症診療入門』
好評発売中

 2013年5月から連載を開始した「プライマリケア医のための認知症診療講座」がこのたび書籍化されました。2016年2月末までに掲載された記事を「診断編」「治療と介護編」「周辺症状編」に分類。さらには、日常診療で感じた疑問をすぐに解消できるよう、Q&A形式で再構成しました。
 Q&Aの数は全部で65個。どこから読んでも理解できるよう、1つのQ&Aだけで解説が完結する形に再編集しました。ぜひ日常診療にご活用ください。(川畑信也著、日経BP社、4644円税込み)

この記事を読んでいる人におすすめ