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第5回 脳画像診断を実施するタイミングと目的
脳画像で認知症を診断できると誤解していませんか?

2013/08/09

 認知症の有無を脳画像検査で判断しようと考えている医師が、ごく少数ながら存在することは残念なことです。私の外来に「物忘れが心配で、あるクリニックを受診しMRI検査を受けました。そこの先生が『脳萎縮は年齢相応ですから認知症の心配はいらないでしょう』と言うので、そのまま経過を見てきました。しかし、物忘れが余計ひどくなっています」などと訴えて相談受診する家族が見られます。

年齢相応の脳萎縮の定義などない!
 実際にそうした患者さんを診察してみると、典型的なアルツハイマー型認知症であることが多いのです。認知症を診たくないとの理由でそのように言うのか、あるいは本当に認知症ではないと考えているのかは分かりませんが、いずれにしても誤った診療態度です。日常診療の中で私も、患者さんや家族に対して「このMRIで見られる脳萎縮は年齢相応ですね」とつい口から出てしまうことがあります。その時にいつも自問するのは、「年齢相応の脳萎縮とはどのような状態だろうか」ということです。そもそも、脳画像検査において年齢相応の脳萎縮の定義はないのです。また、脳画像検査でこの所見があるから認知症と判断する明確な基準もありません。

脳画像検査はあくまで補助検査
 では、認知症診療における脳画像検査は、どのような役割を持っているのでしょうか――。ここでは、脳形態画像検査(CT、MRI)と脳機能画像検査(SPECT、PET)に分けて考えてみます。

 脳形態画像検査を施行する最大の目的は、頭蓋内の器質的疾患を除外することです。臨床症状で一見、アルツハイマー型認知症の病像を示していても、脳形態画像検査で脳腫瘍や慢性硬膜下血腫、急性期脳梗塞などが稀ながら存在する可能性があります。これらを除外するためにCTあるいはMRIを施行するのです。アルツハイマー型認知症を診断するために、CTあるいはMRIを撮影するのではありません。

著者プロフィール

川畑信也(八千代病院〔愛知県安城市〕神経内科部長)●かわばた のぶや氏。1979年昭和大医学部卒。国立循環器病センター、秋田県立脳血管研究センター、成田記念病院〔愛知県豊橋市〕を経て2008年より現職。愛知県認知症疾患医療センターセンター長も兼任。

連載の紹介

プライマリケア医のための認知症診療講座
2020年、患者数が325万人に達するといわれる認知症。患者数の増加に伴い、認知症の診療におけるプライマリケア医の役割が大きくなっています。著者が遭遇した実際の症例を紹介しながら、認知症診療の「いろは」を解説します。
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『プライマリ・ケア医のための 認知症診療入門』
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 2013年5月から連載を開始した「プライマリケア医のための認知症診療講座」がこのたび書籍化されました。2016年2月末までに掲載された記事を「診断編」「治療と介護編」「周辺症状編」に分類。さらには、日常診療で感じた疑問をすぐに解消できるよう、Q&A形式で再構成しました。
 Q&Aの数は全部で65個。どこから読んでも理解できるよう、1つのQ&Aだけで解説が完結する形に再編集しました。ぜひ日常診療にご活用ください。(川畑信也著、日経BP社、4644円税込み)

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