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第1回 認知症の判断には病歴聴取が最も重要
「妻は認知症なのでしょうか」にどう答える?

2013/05/24

 「認知症は高血圧や糖尿病などと同様にコモンディジーズであり、かかりつけ医の先生方も認知症診療に参加すべきである」、「これからはすべての医師が認知症患者さん を診療する時代が到来する」などと声高に叫ばれていますが、実際にはどうでしょうか?

 認知症を専門とされない先生方の率直な気持ちは、「認知症の診断が分からない。専門外の自分が診断してよいのだろうか」「認知症と診断しても手に負えない周辺症状が出てきたら、自分には対応できない」「忙しい外来の中で介護相談にかかわる時間など持てない」が本当のところではないかと思います。

 プライマリケアの先生方が認知症診療に踏み込めない理由の1つに、実際の日常臨床に即した書籍やレクチャーが少なく、認知症を専門とされない先生方にとって診断・治療のスキルアップの機会が少ないことにあると私は考えています。

 本連載では、1996年にもの忘れ外来を開設し、現在までに5000人近い患者さんを診療してきた私の経験を基に、実臨床で認知症を診療できるスキルを解説していきたいと考えています。本連載では、いわゆる教科書的記載をせず、実際に先生方が認知症患者さんを診療している場面を想定し実践的な考え方を述べていく予定です。

基本的な原則を把握しておく
(1)認知症を生じる原因疾患は70前後あるといわれますが、日常臨床で先生方が遭遇する機会の多い疾患は、アルツハイマー型認知症血管性認知症レビー小体型認知症の3つです。この3疾患を診療できるスキルを身に付けることができれば診療スキルは格段にアップします。

(2)認知症が疑われる全ての患者さんを、プライマリケアの先生方が診療する必要はありません。ご自分のスキルの範囲内で診療できる患者さんを診るだけでもよいと思います。

(3)認知症診療は時間が掛かると言われていますが、全ての患者さんに長時間の診療が必要なわけではありません。効率よく診療ができるノウハウはたくさんあるのです。そのノウハウをこの連載で紹介していきます。

(4)認知症診療は、ある意味ではパターン診断です。例えばアルツハイマー型認知症には、あるまとまった特徴的な病像が見られます。この基本的なパターンをマスターできると、その後の診療を迅速かつ効率よく行えるようになります。

(5)認知症の診断は、ある意味では非常にファジーです。例えば、糖尿病のように数値で示される診断基準があるわけではありませんし、血糖を測定すれば診断できるというようにクリアな領域の疾患ではありません。初診時に認知症である、あるいは認知症ではないと明確に判断できない場合も少なくありません。その時点で白黒決着がつかないからといって 心配することはありません。基本的には、半年あるいは1年前後の臨床経過を診てから再度評価をすればよいのです。ある意味、気楽に構えた方が診療に踏み込みやすいかもしれません。

 では、本編に入ります。次のような患者さんが先生方の医院やクリニックを受診したと想定して読んでみてください。

著者プロフィール

川畑信也(八千代病院〔愛知県安城市〕神経内科部長)●かわばた のぶや氏。1979年昭和大医学部卒。国立循環器病センター、秋田県立脳血管研究センター、成田記念病院〔愛知県豊橋市〕を経て2008年より現職。愛知県認知症疾患医療センターセンター長も兼任。

連載の紹介

プライマリケア医のための認知症診療講座
2020年、患者数が325万人に達するといわれる認知症。患者数の増加に伴い、認知症の診療におけるプライマリケア医の役割が大きくなっています。著者が遭遇した実際の症例を紹介しながら、認知症診療の「いろは」を解説します。
この連載が本になりました!
『プライマリ・ケア医のための 認知症診療入門』
好評発売中

 2013年5月から連載を開始した「プライマリケア医のための認知症診療講座」がこのたび書籍化されました。2016年2月末までに掲載された記事を「診断編」「治療と介護編」「周辺症状編」に分類。さらには、日常診療で感じた疑問をすぐに解消できるよう、Q&A形式で再構成しました。
 Q&Aの数は全部で65個。どこから読んでも理解できるよう、1つのQ&Aだけで解説が完結する形に再編集しました。ぜひ日常診療にご活用ください。(川畑信也著、日経BP社、4644円税込み)

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