
イラスト:庄原 嘉子
診療所の開業から、間もなく10年になるA医師。患者数はここまで順調に増え、開業当初の借金も順調に返済してきました。
A医師が開業しているテナントは、3年の定期借家契約で、これまで3回契約を巻き直して事業を継続してきました。しかし、ここへ来てテナントビルのオーナーが交代。次の新しい契約は締結しない可能性があるとの通知が届きました。
開業当初の借金がまだ残っており、患者さんも今の場所が通いやすいと定着してくれています。何とかここで事業を継続したいとのことで、A医師は新しいオーナーに問い合わせをし、直接会って状況を確認することに。後日、新オーナーに意向を聞いたところ、(1)建物が古くなっており、今後大規模修繕が必要になる可能性が高い、(2)現時点でも維持費が相当かかっている──ことから、建て替えを考えているとのことでした。
オーナーの意向は理解はできますが、また新しく別の場所を探して診療所を開設するのは、精神的にも経済的にも相当な負担となります。A医師は新オーナーに、事業を継続できる期間を少しでも長くしてもらえないかと伝え、その日の話し合いを終えました。