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【第29回 高齢者住宅でのテナント開業】
開業のわずか半年の遅れで患者が集まらない?!

2012/10/30

 内科医のF氏は、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の1階でテナント開業する医師の募集広告を見つけ、すぐに賃貸借契約を交わすことにしました。サ高住とは、単身高齢者や夫婦のみの高齢世帯が増える中、厚生労働省と国土交通省が2011年度に共同で創設した制度で、安否確認や生活相談サービスの提供が義務化された高齢者住宅です。在宅医療や介護サービスは外部の医療機関や介護事業者が提供します。

 F氏は、既に開業している先輩や同僚の医師から、「開業当初は外来患者数が少なく経営的に厳しい」と聞いていたので、軌道に乗るまでの間、サ高住の入居者に在宅診療を提供できれば家賃とスタッフの給料くらいは賄えるだろうと考えたのです。テナントの募集広告にも、サ高住の入居者への在宅診療がクリニックにとってメリットになることが記されていました。

 計画によれば、サ高住の1階にF氏のクリニックと調剤薬局が入るほか、生活相談や介護サービスを提供する介護事業者の事業所も併設され、2階から5階が入居者の住居スペースとなっていました。建物の竣工は2012年4月でしたが、F氏は医局と退職時期を相談した結果、同年10月に開業することにしました。ところが、この半年間のブランクがF氏の思惑とは違う結果を生むことになったのです。

 4月の建物竣工と同時に高齢者が続々と入居しましたが、F氏はまだ開業していません。そこで、サ高住の事業者は入居者への医療サービスを充実させるため、連携する医療機関を探し始め、在宅医療専門の別のGクリニックと提携してしまいました。高齢者住宅などへの在宅診療の実施を希望する開業医は多いので、事業者が提携医療機関を探すのには苦労しませんでした。

著者プロフィール

日本医業総研●医院・診療所の開業コンサルティング企業。関西地方を中心に、220件以上の開業支援実績がある。関西および関東でクリニックモールの企画・開発も積極展開している。

連載の紹介

開業の落とし穴
開業は一生の一大事。一方で、診療所の経営環境は悪化の一途をたどっています。開業地の選定や資金調達など、軌道に乗るまでに潜むさまざまな落とし穴を、過去に開業されたドクターの事例を基に紹介します。

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