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インフルエンザ治療のための麻黄湯の使い方

2012/02/21

 インフルエンザの流行が続いています。国立感染症研究所感染症情報センターによると、昨年の10月からインフルエンザの報告数は増え続け、2月第1週には47都道府県全てでインフルエンザの流行が「警報レベル」となりました。ピークは越えたようですが、まだまだ気は抜けません。迅速診断キットの普及や抗ウイルス薬の上市により、インフルエンザの治療は大きく変わってきました。一方で、抗ウイルス薬の副作用から、漢方薬による治療にも改めて注目が集まっています。

 インフルエンザに効果がある漢方薬としてまず名前が挙がるのは麻黄湯です。麻黄湯を服用し、汗がじわーっとでる状態(漢方では「微似汗」といいます)になればOKです。

 麻黄(まおう)、杏仁(きょうにん)、桂枝(けいし)、甘草(かんぞう)からなる麻黄湯は、字のごとく麻黄を含む典型的な漢方薬(麻黄剤)ですから体のがっちりした人向け、すなわち"超"実証用です。ところが、通常は麻黄湯を飲んで動悸やむかつきが発現する虚証の人も、インフルエンザに罹患しているときは麻黄湯で通常は問題ありません。

 インフルエンザのように高熱や関節痛など症状が激烈なときは、通常麻黄剤で不快な思いをする患者さんも1~2日は問題なく飲めるためです。動悸などに気を配る必要はありますが、お湯に溶かして4時間毎に服用するよう指示してください。通常は食間に1日3回ですが、1800年前にまとめられた漢方の「傷寒論」には「2日量を1日で」と書いてありますから、通常の倍量、すなわち4時間毎となるわけです。

インフルエンザの予防にも漢方は有用
 傷寒論では、「微似汗が得られた後は桂麻各半湯(けいまかくはんとう)に変更する」とあります。桂麻各半湯は、桂皮、麻黄、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう)、甘草、杏仁を含む漢方薬ですから、桂麻各半湯が入手しにくい場合は桂枝湯麻黄湯を半分ずつ飲みます。症状が落ち着いた後ならば、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)でもよいでしょう。こちらには麻黄は含まれていません。

 私の妻が風邪を引いた場合、通常は一番体に優しい麻黄剤である麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)を処方しています。ですが、インフルエンザのときだけは麻黄湯を処方しています。一昨年、妻がインフルエンザに罹患した際は、2日間麻黄湯を処方し、2日目の夜に動悸を感じたこともあり、柴胡桂枝湯に変更しました。

 抗ウイルス薬などの西洋薬との併用は問題ありません。ただし、麻黄湯を服用する場合、解熱剤の使用はできれば半日は待ってください。解熱剤を使用すると汗をかきますから、麻黄湯を止めるタイミングが分からなくなってしまうからです。もちろん、高熱で解熱が必要な場合は解熱剤を使うべきです。

 インフルエンザの予防にも漢方薬は有効です。3年前の新型インフルエンザの流行時に、私は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)の予防効果を調べるため、自分が週に一度勤務する愛誠病院(東京都板橋区)の職員を対象とした臨床研究を実施しました。

著者プロフィール

新見正則(帝京大外科准教授、愛誠病院漢方センター長)●にいみ まさのり氏。1985年慶応大卒。専門は末梢血管外科。98年帝京大第一外科講師、02年より同大外科准教授。10年より愛誠病院漢方センター長。

連載の紹介

【臨床講座】漢方嫌いだった外科医の漢方教室
西洋医学的なアプローチで十分な治療効果を得られないとき、漢方薬を使うとよい場合があります。現役外科医の新見正則氏が、“食わず嫌い”の医師向けに漢方の魅力とプライマリケアの現場で役立つポイントを紹介します。

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