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【連載第9回】
肥満細胞とIgE、 好酸球は何をしているのか

2007/04/02

研修医P:「O先生、僕はスギ花粉RASTスコアが4だったのですが、2の人に比べ症状は強いのでしょうか」
指導医O:「RASTスコアは、抗原特異的IgE抗体量を半定量してスコア化したものです。相関係数は低いものの、皮膚反応や誘発反応との一致率は高く、また発症率は相関しています。ですので、4の方が2に比べて症状が出ている人は多いはずです」
研修医P:「そうですか。やはり僕は重症なのかな」

肥満細胞表面のFcεR1にIgEが結合して活性化
指導医O:「いえ、RASTスコアが必ずしも重症度を表現していないとの報告もあります。IgEに関する興味深い実験を紹介しましょう。肥満細胞の表面には、IgEと結合するためのFcεR1という受容体が存在します。FcεR1は、非常に強力にIgEと結合します」
研修医P:「肥満細胞の表面には、FcεR1は何個ぐらい存在するのですか。いくらIgEが肥満細胞の周りにたくさんあっても、この受容体の数が決まっていれば、それ以上のIgEは無駄になってしまいますよね」
指導医O:「そうですね。でも実験では、血液中のIgE量が増えると、肥満細胞表面上のFcεR1の発現量も亢進するというデータが出ています1)

研修医P:「えっ、FcεR1の数は一定ではないのですか」
指導医O:「はい、そうなんです。さらに興味深いことに、肥満細胞表面上のFcεR1の発現が亢進すると、抗原との反応で放出されるケミカルメディエーターの量も増えるそうです2)。またFcεR1の発現が亢進すると、ごく少量の抗原でも肥満細胞が活性化されるそうです」
研修医P:「ふーむ。ということは、IgE値が高い人は、その受容体であるFcεR1が肥満細胞上に多くなり、その結果、少ないスギ花粉でも肥満細胞が活性化されるわけですね。そして、より多くのケミカルメディエーターが放出され、症状が強くなるということでしょうか」
指導医O:「実験上はそうですが、臨床的には単独抗原のアレルギー性鼻炎では、3割程度の人にしかIgE値の上昇が認められないのです」

研修医P:「IgEが多いと、どうしてFcεR1の数が増えるのでしょうか」
指導医O:「もともと肥満細胞の表面のFcεR1は、IgEと結合していないと非常に不安定で、すぐに消えてしまうそうです。逆に、IgEが結合すると安定し、その結果、次々と肥満細胞の表面に蓄積することになり、結果的にFcεR1の数が増加するのです3)。また別の報告では、肥満細胞上のFcεR1にIgEが結合すると、肥満細胞が長生きするそうです4)。長生きすれば、当然、肥満細胞数が増えることになります」
研修医P:「鼻粘膜上皮層中の粘膜型肥満細胞数は、鼻症状と相関すると教えていただきましたが、肥満細胞数が増えるということは厄介なことですね」
指導医O:「最近、IgEが肥満細胞表面のFcεR1と結合するのを阻止する薬剤が開発され、国内でもスギ花粉症で既に治験が終了し、良い結果が出ています」

著者プロフィール

大西正樹(大西耳鼻咽喉科院長)●おおにし まさき氏。1979年和歌山県立医大卒後、日本医大耳鼻咽喉科学教室入局。81年同大助手。85年カナダ・マックマスター大留学。93年墨田区に大西耳鼻咽喉科を開業。

連載の紹介

【臨床講座】ゼロから学ぶ花粉症診療ゼミナール
耳鼻科にローテートしてきた研修医P君が、指導医O先生と医局で雑談するという設定で、花粉症の診断、症例に応じた治療法の選択、患者指導のコツなど花粉症診療のイロハを紹介します。

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