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【連載第6回】
患者への問診と診断のコツ

2007/03/12

指導医O:「Aさん、今日の診察にはP先生も同席させてくださいね。今日はどうしましたか」
患者A :「はい。鼻水がたくさん出るのですが」
指導医O:「いつごろから鼻水が出ていますか」
患者A :「1週間ぐらい前からです」
指導医O:「1週間、ずっと透明の鼻水ですか」
患者A :「はい。透明です」
指導医O:「そうですか。花粉症ですね」
指導医O:「P先生、問診のこの時点で花粉症と診断できます。花粉症の鼻水は水性鼻汁で、膿性になることはありません。もし黄色い鼻水が出る場合は細菌感染を疑います。花粉症は、あくまで水性の鼻水であることにこだわります」
研修医P:「Aさんは1週間ぐらい前からとのことですが、3日前からだったらどうですか」
指導医O:「微妙です。風邪も最初の2~3日は水性鼻汁ですから。その時は咳、喉の痛み、熱など、他の風邪所見がないか聞きます。また目の痒みがないかどうかも。花粉症では目の痒みをよく伴いますが、風邪では少ないですから」

指導医O:「Aさん、では1日に何回ぐらい鼻をかみますか。10回ぐらいかみますか」
患者A :「もっとかみます」
指導医O:「そうですか。それは大変ですね」
指導医O:「P先生、この時点で花粉症重症と判断できます」
研修医P:「くしゃみの回数は聞かないのですか」
指導医O:「聞くな、とは言いませんが、ガイドラインを見ても分かるように、くしゃみの評価はその回数ではなく発作回数なのです。連続するくしゃみは何回あってもそれは1回と数えます。でも患者さんはそうは思いませんから、短い時間での問診には適しませんね。でも参考にはなります」
研修医P:「鼻閉についても無視してよいのですか」
指導医O:「無視するつもりはありません。鼻閉があるかどうか、声を聞けば分かります。その上で確認すればいいですね」

研修医P:「分かりました。検査はやらないのですか」
指導医O:「患者さんが希望すれば、抗原を特定するための検査をしますが、この時期はほとんどスギ花粉でしょう。イネ科、ヒノキ科、また口腔アレルギー症候群の症状があればハンノキも考慮しますけど」
研修医P:「では、好酸球検査はした方がよいのでしょうか」
指導医O:「鼻アレルギー症状を持つ患者の80.2%で鼻汁中の好酸球増多が見られるので、鼻汁中好酸球検査は診断に重要ですね。その場ですぐにできますから。ちなみに黄色い鼻水が出る細菌感染では、好中球が増多しています」

指導医O:「Aさん、鼻の中を拝見します」
指導医O:「P先生、同じ鼻アレルギーでもハウスダストとスギ花粉では、鼻粘膜の状態が全く違います。ハウスダストでは、鼻粘膜は蒼白浮腫状に腫脹していますが、スギ花粉では真っ赤になっていて急性炎症とあまり変わらないことがあります。それだけ炎症が強いのだと思います。風邪と間違えないようにしましょう」

指導医O:「Aさん、鼻の中が真っ赤ですね。つらそうですね」
患者A :「そうなんです。今の状態では仕事が手につきません」
指導医O:「日常生活の支障度++++ですね。Aさんは何のお仕事をしているのですか」
患者A :「タクシーの運転手です」
研修医P:「Aさんの症状は、ガイドラインの『重症のくしゃみ、鼻漏型』に分類されるので、鼻噴霧用ステロイド薬と第2世代抗ヒスタミン薬を処方するのですよね」
指導医O:「そうです。Aさんは車を運転されるので眠気は禁物ですから、鼻噴霧用ステロイド薬としてはフルナーゼがいいでしょう。第2世代抗ヒスタミン薬は、『車運転注意』のないアレグラまたは、クラリチンでもいいですね」
指導医O:「ではAさん、鼻にシュっとするお薬と飲み薬をお出ししますので、使ってみてください。症状がやわらぐと思います。お大事に」

著者プロフィール

大西正樹(大西耳鼻咽喉科院長)●おおにし まさき氏。1979年和歌山県立医大卒後、日本医大耳鼻咽喉科学教室入局。81年同大助手。85年カナダ・マックマスター大留学。93年墨田区に大西耳鼻咽喉科を開業。

連載の紹介

【臨床講座】ゼロから学ぶ花粉症診療ゼミナール
耳鼻科にローテートしてきた研修医P君が、指導医O先生と医局で雑談するという設定で、花粉症の診断、症例に応じた治療法の選択、患者指導のコツなど花粉症診療のイロハを紹介します。

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