日経メディカルのロゴ画像

【連載第1回】
今すぐ始める花粉症の初期療法

2007/02/05

指導医O:「じゃP君、短い研修の間だけど、一緒にがんばろう。スギ花粉症の時期が近付いてきたし、患者さんも増えて忙しくなると思うよ」
研修医P:「はい、がんばります。僕も花粉症なので、今回、耳鼻科で研修させてもらえることになって、ラッキーです」
指導医O:「ははは、研修に身が入りそうだね。じゃ、もう花粉症の勉強はバッチリかな」
研修医P:「実は花粉症になったのは去年からで、恥ずかしながら本当に勉強不足なんです。患者さんに質問されても、ちゃんと答えられるか不安です」
指導医O:「じゃ、分からないことがあったら気軽にどーぞ」

花粉量が10分の1でも症状は2分の1
研修医P:「はいっ、ありがとうございます。では早速、お言葉に甘えて。今年はスギ花粉の飛散は少ない、とニュースで見たのですが、今年は花粉症患者は少ないのでしょうか」
指導医O:「確かに、今年はスギ花粉の飛散は少なそうだね。花粉の量、つまり花芽の成長を左右するのは、前年の7月の気温と日照時間なんだ。去年の7月は、気温は平年並みだったけど、日照時間は短かった2005年よりもさらに短かったんだ。去年は花粉飛散量が少なかったからスギの木には余力があるといえるけど、それを計算にいれても2005年春のような大量飛散はあり得ないと思うな」
研修医P:「ふーむ。だったら、今年の春は楽に過ごせるのかな」
指導医O:「安心はできないよ。花粉量が10分の1になっても、症状は2分の1にしかならないんだ」

レーザー治療や減感作療法は去年のうちに
研修医P:「じゃ、花粉症対策はやっぱり必要なんだ。今からだと、何をやればいいですか?レーザー治療が効果があるって聞いたのですが」
指導医O:「レーザー治療は鼻粘膜の表面を焼くわけだから、花粉が飛散するまでに鼻粘膜が修復されなくてはいけないんだ。だから12月の終わりか、せめて1月の初めまでにやっておかなければいけないね。今年の春には間に合わないよ」
研修医P:「そうですか。となると...減感作療法はどうでしょう?そもそも減感作療法って、効くんですか?」
指導医O:「現在使われているスギ花粉治療用抗原エキスは標準化されていて、以前に比べ治療成績は良くなってるよ。でも残念でした、減感作療法は効果が出るまでに3カ月ぐらいかかるし、花粉飛散時期には抗原量が維持量に達していなくてはならないから、遅くても11月初めにはスタートする必要があるんだ」
研修医P:「うーん、完全に出遅れてしまったんだ。そうしたら、花粉が飛散する何週間か前から薬を服用する初期療法しかないんでしょうか」

予想花粉飛散開始日の2週間前から投与開始
指導医O:「初期療法は、もともと季節前投与と呼ばれていて、予想花粉飛散開始日の2週間前から投与するケースが多いんだ。ケミカルメディエーター遊離抑制薬や、初期の第2世代抗ヒスタミン薬は、患者の満足を得るのに1~2週間かかったから、花粉が飛散してからの服用では遅すぎる感があって、前もって服用しておくんだよ」
研修医P:「でも、最近の第2世代抗ヒスタミン薬は、効果が早いことをうたい文句にしていますよね」
指導医O:「そうだね。でも、初期療法にはもう1つの目的があるんだ。花粉飛散開始日といっても、それは1平方cm当たり花粉が1個飛散した日が連続2日続いた時、はじめてその1日目を花粉飛散開始日と定義するんだよ」
研修医P:「つまり、花粉飛散開始日前にも花粉は飛んでいるということですね」
指導医O:「そうなんだ。開始日前の花粉が鼻粘膜を少しづつ刺激して鼻粘膜の過敏性を亢進させていくんだ。だから初期療法は、この鼻粘膜過敏性亢進を抑制する目的もあるんだよ」
研修医P:「少しづつ刺激を受けるってことは、何も症状がない状態では、花粉が飛んできても、いきなり症状は出ないということですか」
指導医O:「そうそう。ここに面白い実験があるよ(表1)。スギ花粉症患者にシーズン外にスギ花粉誘発試験を行っても、反応が出なかったんだ。シーズン中、鼻粘膜の上皮層にはたくさんの肥満細胞が認められるけど、シーズン外には消失したり、減少したりするんだ。だからスギ花粉誘発試験にも反応しなくなるんだ。花粉症は1型アレルギー反応だから、肥満細胞、抗原、抗原特異的IgE抗体の3点セットで成り立っていることは知ってるよね。肥満細胞がないと、この3点セットが成り立たないってことさ」

著者プロフィール

大西正樹(大西耳鼻咽喉科院長)●おおにし まさき氏。1979年和歌山県立医大卒後、日本医大耳鼻咽喉科学教室入局。81年同大助手。85年カナダ・マックマスター大留学。93年墨田区に大西耳鼻咽喉科を開業。

連載の紹介

【臨床講座】ゼロから学ぶ花粉症診療ゼミナール
耳鼻科にローテートしてきた研修医P君が、指導医O先生と医局で雑談するという設定で、花粉症の診断、症例に応じた治療法の選択、患者指導のコツなど花粉症診療のイロハを紹介します。

この記事を読んでいる人におすすめ