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第10回
世界のワクチン動向について~GAVIの挑戦

2012/07/24
北島知佳(GAVIアライアンス)、江副聡(国連合同エイズ計画)、橘薫子(世界保健機関)

図1 GAVI理事会の構成

 全世界でおよそ1900万人の子どもたちが予防接種を受けられず、結果、いまだに毎年170万人もの5歳未満の子どもたちが、ワクチンがあれば助かっていたはずなのに、命を落としていることをご存知だろうか。これは20秒に1人の子どもが亡くなっている計算となり、そのほとんどが発展途上国の子どもたちだ。また、新しいワクチンが発展途上国に導入されるのは、先進国より平均10~15年遅れているといわれている。

 現在193の国と地域が締結している「国連子どもの権利条約第24条」では、子どもたちの健康や医療に対する権利を明記している。しかし、多くの国々ではその権利は守られていない。メリンダ・ゲイツ氏(ビル&メリンダ・ゲイツ財団共同会長、ビル・ゲイツ氏の妻。参照記事 )も述べているが、子どもの命を救う予防接種を受けられるかどうかが、生まれた国によって決まるようなことはあってはならないはずだ。

 そこで、このような状況を変えるため、国際機関・民間・政府・ワクチン製造業者などの関係者が集まって、GAVIアライアンス(旧ワクチンと予防接種のための世界同盟:以下「GAVI」)が組織された。発展途上国における予防接種へのアクセスを高めることで、子どもの命を救い、人々の健康を守ることを使命とする国際公益法人だ。GAVIは2000年の設立以来、約3億2600万人の子どもたちに予防接種を行い、550万人の死を未然に防いできた。また、ミレニアム開発目標(参照記事)の達成期限である2015年までに、さらに2億5000万人の子どもに予防接種を行うとしている。

GAVIアライアンスとは
 世界経済の停滞に伴い、政府開発援助(ODA)など公的支援が削減される中、新しい開発支援メカニズムとして「官民パートナーシップ」が注目を集めている。GAVIはそのような官民パートナーシップの保健分野における草分けの1つであり、2000年ダボスにおける「世界経済フォーラム」で設立が決まった。GAVI事務局はスイスのジュネーブにあり、職員は約160名。ほかに資金調達関連の活動を行っているワシントンD.C.事務所がある。

 GAVIの重要な意思決定は年2回の理事会でなされる。理事会は先進国および発展途上国政府を代表する10議席、国際組織9議席、そしてGAVIと直接利害関係を持たない個人9議席で構成されている(図1)。国際組織とは、世界保健機関WHO)・国際児童基金UNICEF)・世界銀行などの国際機関、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、先進国・新興国のワクチン製造業者、ワクチン研究機関などである。
 
 GAVIについてしばしば質問を受けるのは、GAVI設立以前の予防接種の取り組みと一体どこが違うのかという点だ。GAVIの特徴は、様々な組織がアライアンスのメンバーとしてそれぞれのスキルや知見を提供し合うことで、より効果的な活動を行えることにある。また、情報の共有を密に行うことで活動の重複を避け、財政的あるいは人的資源の有効活用が可能になる。

 GAVIの主な活動は途上国へのワクチン供給と、そのための資金調達である。その枠組みの中で、例えば、WHOは各国のワクチン需要や新規ワクチン導入に関する技術的助言を行い、 GAVIが支援国に供給するワクチンはUNICEFを通じて調達される。ワクチン価格を下げ、持続的な供給を確保するには、ワクチン製造業者と協働する必要がある。一方、資金調達面では、世界銀行が予防接種のための資金調達メカニズムにおいて財務顧問の役割を担う。

 また、GAVIは現地事務所を持たず、その活動はアライアンスのメンバーである支援国の政府機関やUNICEF、WHOの現地事務所を通じて行うため、事務局は比較的小規模の人員で効率的に活動を行うことができるのである。

著者プロフィール

ジュネーブの国際機関に勤務する日本人職員が有志で集まり、持ち回りで執筆していきます。なお、本記事内の意見部分は筆者らの個人的見解であり、所属組織の公式見解ではありません。

連載の紹介

ジュネーブ国際機関だより
WHO(世界保健機関)やUNAIDS(国連合同エイズ計画)などスイス・ジュネーブの国際機関で日々議論されている世界の保健医療(グローバルヘルス)の課題を、現地の日本人職員がリアルタイムに日本の医療関係者に伝えます。

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