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世界の流行トピック「非感染性疾患」と日本の貢献

2011/09/13
大竹雄二(在ジュネーブ国際機関日本政府代表部)、江副聡(国連合同エイズ計画)、喜多洋輔(元・世界保健機関)、鷲見学(元・世界保健機関)

写真1 今年5月フランスで行われたG8サミット。保健分野においては、昨年カナダにおける開催時に合意された母子保健へのコミットメントを再確認した。(出典:Presidence de la Republique francaise - C.Alix)

 今回は9月19~20日に国連ハイレベル会合が行われるなど、グローバルヘルスの注目課題となっている「非感染性疾患:Non-Communicable Disease (NCD)」を紹介したい。

 グローバルヘルスの世界にも、“流行”があるのをご存知だろうか。こう言ってしまうと首をかしげる人もいそうだが、重点的に取り組むべきトピックとして世界的に認知されることで、資金が集まり、活動が活発化し、成果を上げることにつながるため、流行を一概に否定することはできない。

 グローバルヘルスの流行がどのようにして生じるかは、一言で説明するのは難しい。多くの人命に影響を及ぼす重要な課題であることが大前提だが、「G8の主要テーマとして取り上げられる(昨年のテーマは母子保健)」、「国連総会で特別会合が開かれる(連載第6回参照)」、「WHO総会で主要な議題となる(連載第2回参照)」などが、“流行の条件”となっているようだ。

 流行とされたトピックは大きな注目を集め、そして資金を得やすい状態となる。逆に言うと、それ以外のトピックとの間に格差が生じるとも言える。流行にしやすいトピックかどうか、流行を作ることに長けた国際機関が関与しているかどうかで、その差が生じることになる。これは、多くの人には不当に映るかも知れない。しかし、流行に乗ることでその分野の対策が大幅に進み、本来投入されなかった資金が保健分野に流れ、保健分野全体の底上げにつながるとも考えられるため、このメリットは無視できないのだ。

 そこで、グローバルヘルス各分野の関係者は、大きな流行を作り出し、また、作り出された流行に上手く「乗る」ことを、常に視野に入れて日々活動している。また世界各国も、G8や国連総会、WHO総会などで特定のトピックについて合意がなされるよう主導し、自国が重視するトピックが成果を出しやすいように環境を整え、自国の国際的な地位・存在感の向上に取り組んでいる。十分に認知されていなかったトピックに光を当て、一過性のものに終わらせず、その後も国際保健の大きな「柱」となれば、「成功」という具合だ。

 かつて日本も、感染症対策や保健システムの強化などの分野をG8における主要トピックとして取り上げ、これらの分野を国際保健における大きなアジェンダとし、その対策の進展に大いに貢献した。そしてその流れは、例えば第4回で紹介した「世界基金」として脈々と受け継がれており、成功した代表例であると言える。では、今年大きな流行となっているトピックは何か。それが、今回取り上げる「非感染性疾患(Non Communicable Disease)」、略して「NCD」である。

著者プロフィール

ジュネーブの国際機関に勤務する日本人職員が有志で集まり、持ち回りで執筆していきます。なお、本記事内の意見部分は筆者らの個人的見解であり、所属組織の公式見解ではありません。

連載の紹介

ジュネーブ国際機関だより
WHO(世界保健機関)やUNAIDS(国連合同エイズ計画)などスイス・ジュネーブの国際機関で日々議論されている世界の保健医療(グローバルヘルス)の課題を、現地の日本人職員がリアルタイムに日本の医療関係者に伝えます。

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