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病状を受容せず怒り出す末期癌患者への関わり方

82歳男性。丸山辰雄さん(仮名) 主訴:胃癌(末期)

 公営住宅で妻の勝子さんと2人暮らし。吐血して総合病院に救急搬送され、緊急内視鏡検査を施行。病理検査の結果、胃癌と診断されましたが、当初本人は「胃潰瘍疑い」と説明を受けていました。本人が手術を拒否し、化学療法を強く希望したため、実施したものの効果はなく、多発転移に至り、通院が困難となりました。年齢などを考慮し、在宅緩和ケアの方針で、一条ファミリークリニックに訪問診療の依頼がありました。病院の地域連携室からは、「全身状態は落ち着いている。診療情報提供書は本人から受け取ってほしい」と言われています。

 一条医師が初回の訪問に向かうと、丸山さんはベッドに横になっていました。勝子さんから受け取った診療情報提供書には、「胃癌末期であり、本人の希望で在宅緩和ケアの方針となりました。急変時はDNARの方針です」とだけ書いてあります。

 一条医師がベッドに近付いて挨拶すると、丸山さんは「お前は誰だ」と怒り出しました。勝子さんが「往診に来てくださった先生よ、失礼じゃないの」となだめても怒りは収まらず、「もう帰れ」と言っています。

連載の紹介

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