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アル中、暴言、支払い拒否…厄介な患者と良い関係を築くコツ

78歳男性。福田武さん(仮名) 主訴:呼吸困難

 陳旧性心筋梗塞による慢性心不全、高血圧症、アルコール依存症、C型肝炎、頸椎損傷といった基礎疾患のある患者です。中原病院(80床の中小病院)を定期受診していましたが、約1年前より通院を自己中断。以来、数カ月ごとに心不全の急性増悪で入退院を繰り返しています。入院中にはスタッフへの暴言や、喫煙、買い食いなどの問題行動が多く、退院後の外来受診もなかなか続きません。今回、呼吸困難で中原病院に緊急搬送され、クリニカルシナリオ(CS)1の急性心不全および肝障害の診断となりました。

 「良くなって退院しても、すぐ外来に来なくなって、タバコは吸う、薬は飲まない、好きなように飲み食いしてまた入院になるからもう面倒を見切れない」「入院中、看護師に暴言を吐き、言うことを聞かない」など、大半の病院スタッフが対応するのをちゅうちょしています。これまでの入院費の支払いも滞っているようです。

 院内で検討した結果、福田さんには治療に協力すること、医療費を支払うことに関して誓約書にサインをしてもらった上で入院を受け入れることとし、主治医は総合診療科の六倉医師が初めて担当することになりました。入院後、ニトログリセリン注射、利尿薬注射、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)で治療を開始。

 六倉医師がこれまでの経過や背景情報をカルテと病院スタッフからの聴取で確認したところ、福田さんは独居で身寄りなし、介護保険サービス利用なしで、既往として、数年前に急性心筋梗塞でカテーテル治療を受け、交通事故で頸椎を損傷したため歩行障害を有し、急性アルコール中毒による搬送歴があること、人にお金を貸したが返済が滞っているため医療費を支払えないと主張しているといったことが分かりました。

連載の紹介

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