日経メディカルのロゴ画像

多剤使用の高齢者、薬の数と量を減らしてますか

2014/10/06

 第1回は、転倒の既往を尋ねるということがキーポイントでしたが、お役に立てたでしょうか? 4種類以上の薬剤服用が転倒のリスクとなる、というお話をしましたが、第2回は、このような多剤使用(Polypharmacy)の高齢者に対する適切な薬物療法のポイントについてまとめてみます。

 高血圧、糖尿病といった慢性疾患は歳をとるにつれて増えていき、それぞれの疾患に対して適切な治療・処方をしていくだけで、かなりの数の薬を毎日飲むことになります。

 一般に良く知られている薬物相互作用は1:1の関係で、たとえば10種類の薬が体内に入ったとき、それらがどのように体内で作用するかは予測できません。多剤使用によって、吸収/代謝過程で相互作用が起こり、本来の薬効が発揮できない、あるいは有害作用(副作用)がより高頻度に起こることが知られています。また、多くの高齢患者は複数の医師や医療機関(循環器科、消化器科、泌尿器科、耳鼻科、皮膚科など)にかかり、それぞれから処方をうけ、どの医師も全体像を把握しないまま次々に新しい薬が増えていく、ということが起こります。
 
 多剤使用の高齢者に対しては「薬の数、量を減らすべき」とは分かっていながら、どこから手をつけていけばいいのか、なかなか見えないということもあるでしょう。そんなときは、次のようなステップを取ってみましょう。

ステップ 0-飲んでいる薬を正確に把握する
 頓服、サプリメントも含めて日常飲んでいる全ての薬を実際に持ってきてもらいます。服薬状況を含めて確認するのは手間がかかることですが、最も重要です。薬剤師や看護師の協力が得られることが理想的です。薬を持参することで、患者さんの薬に対する認識も高まり、コンプライアンスも把握できます。患者さんから「先生、実はこれは毎日飲んでいません・・・」と告白されることはよくあります。

ステップ 1-薬の適応症を確認する
 患者さんの病歴と薬を照らし合わせることに加え、患者さん自身に「この薬は何のための薬ですか?」と尋ね、適応のはっきりしない薬は中断を考慮します。長期間服用していた薬を中止する際には、離脱症状を防ぐために数週間かけて漸減することをお勧めします。

ステップ 2-薬の効果を評価する
 糖尿病や高血圧の薬は日常的にその効果をモニターしますが、それ以外の薬ではいったん投薬がはじまると、そのまま漫然と継続されるということが多々あります(過活動膀胱の治療薬など)。効果が不十分であれば、投薬量を増やすか他の薬剤に変更を検討します。効果がない場合あるいは副作用が現れた場合には中止します。

ステップ 3-薬の副作用の有無を確認する
 これは「常に薬を疑え!」という老年医学の原則の1つです。高齢者は症状を過小評価したり、医師に打ち明けるのをためらったりしがちです。特に消化器症状(むかつき、便秘、下痢など)、膀胱症状(尿失禁、夜間頻尿など)、めまいやふらつきといったものは、医師が具体的に尋ねることが重要です。また、薬の副作用を別の薬で治療されていた、ということも少なからずあります。

 例えば、メトホルミンによる嘔気に対し、メトクロプロマイドが処方され、その副作用によるパーキンソン症候群(パーキンソニズム)に対してレボドパが加えられたという症例や、NSAIDsの頻用から血圧が上がり、利尿薬が開始され、それによって起こった頻尿に対し、オキシブチニン(過活動膀胱治療薬)が加えられた、といったうそのような本当の話があります。

ステップ4-高齢者に対して一般に不適切とされる薬剤をみつける
 「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物のリスト」が日本老年医学会から2005年に発表されています。これは米国で作られた「Beers Criteria」(高齢者への投与が一般に不適切とされる薬物)を基に日本の老年科専門医の間でのコンセンサスとして作られたものです。

 慎重投与とされる薬物、その理由、代替薬が列記されていますので、一度目を通しておく価値があると思います。最も重要なものの1つは抗コリン作用を持つ薬剤です(表1)。抗コリン薬というとアトロピン、ブスコパンを思い浮かべられるでしょうが、過活動膀胱治療薬、抗ヒスタミン剤、三環系抗うつ薬、一部のSSRIも含まれ、便秘、尿閉、頻脈だけでなく、せん妄(これは次回に詳しくとりあげます)を引き起こす可能性があります。

著者プロフィール

岩田勲(ノースキャロライナ大学チャペルヒル校医学部内科老年医学部助教授)●いわたいさお氏。1994年九州大学医学部卒。タフツ大学医学部(ボストン)客員研究員、カリタスカーニー病院(ボストン)内科チーフレジデント、デューク大学医学部 老年科フェローを経て、2012年より現職。

連載の紹介

若手医師への老年医学のすすめ
高齢者に多く見られる症候群(老年症候群)をはじめ、高齢者およびその家族とのコミュニケーション、緩和ケア・終末期医療について、日本の若手医師に必要な「老年医学の基本」をエピソードを交えながらまとめていきます。

この記事を読んでいる人におすすめ