厚生労働省の発表によると全国の認知症の患者数は、2012年の時点で約462万人。65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症でした。ですが、このまま日本の高齢化が進むと2025年には認知症患者数が約700万人となり、65歳以上の高齢者は約5人に1人が認知症を発症する推計になっています。国も2012年に「認知症施策推進5か年計画」(オレンジプラン)を、2015年には「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を策定するなど、認知症患者に社会として対応していくための準備を進めています。
そして近年、認知症も糖尿病の重要な合併症の1つとして注目されるようになっています。認知症にはアルツハイマー病、脳血管性認知症(血管性認知症)、レビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症(ピック病)など複数の病態がありますが、このうち、日本の認知症患者の67.6%を占めるアルツハイマー型と、19.5%を占める脳血管性認知症が糖尿病に関連していることが明らかになってきたからです。
14の臨床研究のメタアナリシスで糖尿病がアルツハイマー病の発症リスクになっていることが明らかになっていますし、日本でも九州大学が中心となって行っているコホート研究の久山町研究で、アルツハイマー病と脳血管性認知症について、耐糖能レベルの悪化に伴って発症率が高まることが分かっています(図1)。

図1 耐糖能レベルごとの認知症の発症率