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第9回(前編)
GLP-1受容体作動薬を選択すべき患者とは?

2017/12/21
岩岡 秀明(船橋市立医療センター 代謝内科部長)

 インクレチン関連薬の1つとして最近注目されているのがGLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体作動薬です。これは、血糖依存性にインスリン分泌を促進し、そしてグルカゴン分泌も抑制することで血糖降下作用を発揮する薬剤です。単独処方であれば低血糖を来さず、体重減少降下も期待できるため、インスリン分泌能が保たれている肥満2型糖尿病患者に特に有用な薬剤の1つとされています。

 日本では2010年からリラグルチド(商品名ビクトーザ)とエキセナチドバイエッタ)が使用可能になっています。2013年には、基礎インスリンと併用可能なリキシセナチドリキスミア)が発売されています。また、週1回投与の製剤としては2012年に持続性エキセナチドビデュリオン)が2015年にはデュラグルチドトルリシティ)が発売され、現在5種類の製剤が使用できるようになっています。

 2015年のADA(米国糖尿病協会)とEASD(欧州糖尿病学会)による合同ステートメントは、GLP-1受容体作動薬メトホルミンに続く第二選択薬の1つに位置付けました。また、持効型インスリンとの併用療法については、BOTの次のステップとして、Basal-Bolus Therapy(基礎インスリンと2~3回の追加インスリン)と同列に位置付けました1)

 一方、日本では注射薬への抵抗感が比較的強いためか、メトホルミンで効果が得られない場合でも、GLP-1受容体作動薬はあまり使われていません。原則、3剤の経口薬を併用しても血糖値をコントロールできない場合にインスリン療法が導入されていますが、そのような患者でインスリン分泌能が保たれている肥満者の場合に、インスリン療法(BOT)と併用する形でGLP-1受容体作動薬が用いられることが多いです。

 その他、インスリン療法で血糖値をコントロールできるようになった場合に、インスリン製剤から、GLP-1受容体作動薬に切り替えるといった形でも用いられています。

 ただし、副作用として悪心や便秘、下痢などの消化器症状、急性胆石症が生じること、頻度は不明ですが急性膵炎を生じる可能性も指摘されています。特に膵炎の既往がある患者では処方を避けるべきでしょう。また、SU薬と併用すると重篤な低血糖を生じるリスクがあるため、併用時にはSU薬を減量する必要があることも忘れてはなりません。発売開始後まだ10年程度の薬剤なため、長期的な安全性についての情報収集がいる薬剤といえます。

 加えて、GLP-1受容体作動薬は高価な薬剤です。特にインスリン療法と併用する場合は、患者の経済的な負担にも十分配慮する必要があります。

短期・長期作用型で分類して理解を
 5種類あるGLP-1受容体作動薬は、短時間作用型と長時間作用型に分けて考えると理解しやすくなります。特徴を表1に示します。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。2002年4月より船橋市立医療センター。2012年より千葉大学医学部臨床教授を併任。日本糖尿病学会専門医、同学会学術評議員、日本内分泌学会専門医。主な編著書:「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック」、「内分泌代謝内科グリーンノート」(いずれも中外医学社)など。

連載の紹介

岩岡秀明の「糖尿病診療のここが知りたい!」
最新のエビデンス・ガイドラインに基づき、糖尿病診療で把握しておくべき知識、症状に合わせた治療方針の組み立て方、患者指導の勘所、薬剤の使い分けなどについて重要なポイントを解説する連載。患者の症状や年齢、生活習慣に合わせたワンランク上の糖尿病診療を行う秘訣を、ベテラン糖尿病専門医である岩岡秀明氏が紹介します。
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