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第7回
DKAより怖い高浸透圧高血糖症候群の攻略法

2017/11/02
岩岡 秀明(船橋市立医療センター 代謝内科部長)

 高血糖を来す糖尿病の急性合併症には、前回解説した糖尿病ケトアシドーシス(DKA)に加え、高浸透圧高血糖症候群(Hyperosmolar Hyperglycemic Syndrome : HHS)があります。今回は、HHSの症状のおさらいと鑑別・治療のポイントを解説します。

 HHSは、著しい脱水が先行し、循環不全を来す状態を指します。高齢者に多く見られ、軽度な2型糖尿病患者の他、中にはHHSを起こして初めて糖尿病であることが判明する高齢者もいます。

 発症の誘因となるのは、薬剤(利尿薬、ステロイド薬、フェニトイン、β遮断薬、シメチジン)、感染、高カロリー輸液、経管栄養などです。痙攣やミオクローヌス、髄膜刺激症状、精神症状などを呈し、脳卒中との鑑別が問題になります。

 そのため、脳卒中が疑われる患者であっても、HHSも鑑別に入れて必ず血糖値と血漿浸透圧をチェックする必要があります。また、HHSではDKAと異なり、多くの症例で尿ケトン体が陰性となります(ときに軽度陽性になることもあります)。そのため尿ケトン体が陰性でも除外できない点も注意が必要です。

 HHSにおける特徴的な血液検査所見は、以下の通りです。
(1)血糖値が600mg/dL以上
(2)血漿浸透圧が350mOsm/L以上
(3)pH7.2以上、HCO3- 18mEq/L以下

 典型例ではこれらを全て満たしますが、厳密な判断基準ではありません。著明な高血糖でアシドーシスがない場合にはHHSと診断しましょう。

 HHSの治療は、基本的に前回のDKAと同様で、脱水の補正と電解質の補充、インスリンの適切な投与、さらにHHSをもたらした誘因を取り除くことです。水分欠乏により体重が10~20%減っていることが多く、脱水の程度はDKAより高度です。そのため、より大量の補充が必要となります。

 また、血糖値はDKAよりも高値となりやすい一方で、インスリン感受性は比較的良好なため、治療によって速やかに血糖が降下しやすいという特徴があります。そのため、対処法として最初の1時間は生理食塩水のみを急速に補充し、その後にインスリンを開始するという意見もあります。

 しかし、ADA(米国糖尿病協会)のアルゴリズムでは、DKAと同様にインスリンの同時投与を推奨しているため、私もインスリンを同時に投与しています。治療介入後に血糖値が降下してきた場合は、インスリン投与量を迅速に減量することが重要となります。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。2002年4月より船橋市立医療センター。2012年より千葉大学医学部臨床教授を併任。日本糖尿病学会専門医、同学会学術評議員、日本内分泌学会専門医。主な編著書:「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック」、「内分泌代謝内科グリーンノート」(いずれも中外医学社)など。

連載の紹介

岩岡秀明の「糖尿病診療のここが知りたい!」
最新のエビデンス・ガイドラインに基づき、糖尿病診療で把握しておくべき知識、症状に合わせた治療方針の組み立て方、患者指導の勘所、薬剤の使い分けなどについて重要なポイントを解説する連載。患者の症状や年齢、生活習慣に合わせたワンランク上の糖尿病診療を行う秘訣を、ベテラン糖尿病専門医である岩岡秀明氏が紹介します。
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