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第6回
腹痛、悪心・嘔吐では必ずDKAの鑑別を

2017/10/12
岩岡 秀明(船橋市立医療センター 代謝内科部長)

 腹痛、悪心・嘔吐などの消化器症状や、かぜ症状で来院する患者では常に糖尿病ケトアシドーシスDKA)の可能性を念頭に置き、鑑別しなければなりません。今回は、DKAの鑑別と治療のポイント、そしてつい陥りがちなピットフォールをご紹介します。

 まず、DKAのおさらいをしましょう。

 DKAは、著しい高血糖、脱水、ケトン体の過剰産生、代謝性アシドーシスを起こす病態です。高度なインスリン作用不足とインスリン拮抗ホルモン(カテコールアミン、コルチゾール、グルカゴン、成長ホルモン)の上昇により、糖新生の亢進、グリコーゲン分解、組織での糖利用の阻害が起きることで著しい高血糖を呈します。さらには脂肪分解が亢進し、血液中に放出された遊離脂肪酸(FFA)が肝臓でケトン体(β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸)へと変換されて、ケトーシスと代謝性アシドーシスを生じます。

 臨床症状としては、数日の経過で急激な口渇、多飲、多尿、倦怠感が出現し、脱水、様々な程度の意識障害、体重減少を呈するのが特徴です。腹痛、悪心・嘔吐を伴うこともあり、急性腹症と誤って診断される場合もあります。身体所見では、Kussmaul呼吸(代謝性アシドーシスを補正するための過呼吸)、呼気のアセトン臭、口腔粘膜の乾燥、低血圧、頻脈を認めます。

 通常は血糖値250mg/dL以上、重炭酸塩の低下(15mEq/L以下)、血中・尿中ケトン体の上昇を伴うアシドーシス(PH7.3以下)を認めればDKAと診断できます。鑑別には、口渇・多飲・多尿の有無、糖尿病の既往、そして呼吸数の増加の確認に加え、血糖値と血中・尿中ケトン体、pHの測定が必要です。

 DKAの予後は初診時の意識レベルと代謝性アシドーシスの程度(pH)が重要であり、決して血糖値で重症度を判断してはいけません。診断基準と重症度分類は、米国糖尿病協会(ADA)によるガイドラインがよく参照されています(表1)1)。この基準ではpH7.25~7.30は軽症、pH7.00~7.25は中等症、pH7.00未満は重症とされています。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。2002年4月より船橋市立医療センター。2012年より千葉大学医学部臨床教授を併任。日本糖尿病学会専門医、同学会学術評議員、日本内分泌学会専門医。主な編著書:「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック」、「内分泌代謝内科グリーンノート」(いずれも中外医学社)など。

連載の紹介

岩岡秀明の「糖尿病診療のここが知りたい!」
最新のエビデンス・ガイドラインに基づき、糖尿病診療で把握しておくべき知識、症状に合わせた治療方針の組み立て方、患者指導の勘所、薬剤の使い分けなどについて重要なポイントを解説する連載。患者の症状や年齢、生活習慣に合わせたワンランク上の糖尿病診療を行う秘訣を、ベテラン糖尿病専門医である岩岡秀明氏が紹介します。
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