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第4回
糖尿病の第一選択薬はなぜメトホルミンなのか

2017/08/31
岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)

 前回の「糖尿病患者、初診時に何を診るべき?」では、新たに経口血糖降下薬を投与する糖尿病患者では、インスリンの絶対的・相対的適応を判断する必要があることを説明しました。

 今回は、インスリンの適応とならない患者での治療方針の組み立て方をご紹介します。最初に行うべきは、血糖コントロール状態を評価することです。

 (1)高齢者以外では、空腹時血糖値160mg/dL以上、(2)食後2時間血糖値220mg/dL以上、(3)HbA1c8.0%以上――のいずれかが当てはまる場合は、通常は食事療法・運動療法と同時に経口血糖降下薬を投与することになります。

 ただし、進行した糖尿病網膜症(増殖前網膜症・増殖網膜症)がある患者では、血糖を改善することで、網膜症の悪化・進展を招く場合があります。そのため、経口血糖降下薬の使用前に必ず眼科を受診させ、眼底検査を受けてもらう必要があります。

 そこで進行した網膜症が発見された場合には、眼科と密接な連携を取りながら、低血糖を起こしにくい薬剤(ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬)を処方し、数カ月かけてゆっくりと血糖を改善していかなければなりません。

 では、どのような基準で経口血糖降下薬は選べばよいのでしょうか。

低血糖や体重増加を起こしにくい薬剤から選択する
 2007年に発表されたチアゾリジン系薬剤のロシグリタゾン(日本未発売)に関するメタアナリシスでは、本剤の使用群では心筋梗塞が有意に増え、心血管死も増加するというインパクトの大きい結果が示されました(Nissen SE,et al.N Engl J Med.2007;356:2457-71.)。

 また、2008年のACCORD試験では、罹病期間が長く心血管病変のリスクが高い2型糖尿病患者の場合、厳格な血糖コントロール群は通常療法群よりも、有意に総死亡を増やすという結果が示されました。

 これらの報告を受け、米国FDAは2008年に全ての新規血糖降下薬で、承認前および承認後に「心血管合併症を増やさないことの証明」をするよう義務付けています。

 また、ACCORD試験では、通常療法群と比較して厳格な血糖コントロール群では、重症低血糖や体重増加の頻度が有意に高まることが報告されました。この結果から、経口血糖降下薬の選択には、心血管合併症を増やさないことに加え、低血糖や体重増加を起こすリスクが低いことも併せて重視すべき条件となったのです。

 つまり、経口血糖降下薬を選択する際には表1の7項目を全て満たすものが理想的と考えられます。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。2002年4月より船橋市立医療センター。2012年より千葉大学医学部臨床教授を併任。日本糖尿病学会専門医、同学会学術評議員、日本内分泌学会専門医。主な編著書:「ここが知りたい! 糖尿病診療ハンドブック」、「内分泌代謝内科グリーンノート」(いずれも中外医学社)など。

連載の紹介

岩岡秀明の「糖尿病診療のここが知りたい!」
最新のエビデンス・ガイドラインに基づき、糖尿病診療で把握しておくべき知識、症状に合わせた治療方針の組み立て方、患者指導の勘所、薬剤の使い分けなどについて重要なポイントを解説する連載。患者の症状や年齢、生活習慣に合わせたワンランク上の糖尿病診療を行う秘訣を、ベテラン糖尿病専門医である岩岡秀明氏が紹介します。
編集部からのお知らせ
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