チアゾリジン薬は脂肪細胞に作用してインスリン抵抗性を改善する経口血糖降下薬であり、日本で販売されているのはピオグリタゾン(商品名アクトス)のみである。
作用機序
チアゾリジン薬の標的は脂肪細胞の核内受容体PPARγである。PPARγに結合することで、脂肪細胞から分泌されるさまざまな物質(アディポサイトカイン)のうち、インスリン抵抗性を惹起する物質(遊離脂肪酸(FFA)、TNF-α、レジスチン)の分泌を減少させ、インスリン感受性を改善する物質(アディポネクチン)の分泌を増加させる。
適応
ピオグリタゾンの適応は、2型糖尿病で食事療法、運動療法という基本治療を実施しているにもかかわらず、良好な血糖コントロールが達成できない例である。特にBMI高値(25kg/m2以上)の肥満、あるいはHOMA-R≧2.5でインスリン抵抗性を示す場合が良い適応である。非肥満のケースでも有効な場合がある。
ただし、食事療法が順守不良で過食傾向が持続している場合には、肥満の有無を問わず、次第に体重と体脂肪が増加する。インスリン抵抗性がいったん改善しても、再びインスリン抵抗性が増大する可能性があり、ピオグリタゾン使用例では体重増加を特に注意する必要がある。
臨床上の位置づけ
欧米の糖尿病ガイドラインではチアゾリジン薬を、インスリン抵抗性が想定される2型糖尿病における第2選択薬として位置づけている。その理由は副作用(特に浮腫)の頻度が高いこと、体重増加を来しやすいことである。
筆者の考えも同様で、肥満およびインスリン抵抗性の2型糖尿病患者に対する第1選択薬は、前回解説したビグアナイド薬である。今年5月からは、1日最大2250mgまで使用できるメトグルコ(商品名)の長期処方が可能となった。従来の最大用量である750mgで効果が不十分な場合、ぜひ増量を検討していただきたい。ただし、7月27日に出た医薬品・医療機器等安全性情報では、メトグルコとの因果関係が否定できない乳酸アシドーシスが3例報告されており、今後注意を要するだろう。脱水症状や腎機能などのモニタリングも怠りなく行う必要がある。
チアゾリジン薬は、副作用などでビグアナイド薬が使用できない場合、またはビグアナイド薬単独では効果が不十分な場合に使用すべきであろう。
使用法
(第1選択のメトホルミンで効果が不十分、あるいは使用できない場合)
ピオグリタゾン(アクトス) 15mg 1日1回(朝食後)より開始
血糖改善効果、副作用を見ながら、30mg 1日1回に増量
最高1日45mgまで増量可能
主なエビデンス
心血管病変の既往を持ち、既に十分な薬剤介入が行われている2型糖尿病患者において、ピオグリタゾンが心血管イベント発症および総死亡率を抑制し得ることがPROactive(Prospective Pioglitazone Clinical Trial in Marovascular Events)で証明され、同時に糖尿病患者におけるインスリン導入率を低下させた。1)
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著者プロフィール
岩岡 秀明(船橋市立医療センター代謝内科部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。2002年4月より船橋市立医療センター。日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医・指導医。

連載の紹介
【臨床講座】糖尿病診療「こんな時どうする?」
インクレチン関連薬の登場、インスリン療法のデバイスの進歩などに伴い、糖尿病治療における薬剤の使い分けや選択は難しさを増しています。日常診療に役立つ実践的な診療ノウハウを、最新の知見を交えながら解説します。
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