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連載第15回(最終回)
糖尿病の救急-高血糖(昏睡)編

2006/07/21

【質問】
最近よく耳にする「劇症1型糖尿病」は、どのような経過をたどるのですか?

【回答】
発熱、消化器症状で発症し、数日間でケトアシドーシスに陥る。診断が遅れれば死亡する場合も。

 本連載の最終回は、緊急性の高い「糖尿病ケトアシドーシス」と、それが初発症状となって発症する「劇症1型糖尿病」、さらに「高血糖高浸透圧昏睡」について解説する。

1.糖尿病ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)
 高度なインスリン作用不足によって起こるケトーシスアシドーシスが主徴で、それに脱水が加わって起こる意識障害である。2型糖尿病では、清涼飲料水多飲者に起こることがある(いわゆるペットボトル症候群)。また、基礎疾患として急性心筋梗塞、急性感染症、脳血管障害を合併している場合には、重症化することからICUでの高度な管理を必要とする。DKAが疑われる場合には直ちに初期治療を開始し、同時に常勤の糖尿病専門医がいる医療機関への転送を準備する必要がある。

 血糖値が500mg/dL以上で、尿糖および尿ケトン体が強陽性で、嘔吐や腹痛と共に意識レベルが低下している場合はDKAと診断できる。ただし、血糖値は300mg/dL前後のこともあり、血糖値のみで重症度を判断してはならない。脱水、著しいケトン尿、消化器症状がDKAに特徴的である。

 DKAが疑われれば、直ちに生理食塩水を1000mL/時間(14~20mL/kg/時間)の速度で点滴を開始する。ただし、高齢者と小児の場合は7~10mL/kg/時間とする。その上で、速効型インスリン0.2単位/kg体重(体重50kgならば10単位)をまず静注し、次いで点滴内に速効型インスリン0.1単位/kg体重/時間を加え、至急、専門医のいる医療機関に転送する。治療のポイントは、(1)生理食塩水の大量輸液、(2)インスリンの持続静注、(3)カリウムの補給――の3点である。詳しくはテキストを参考されたい(参考文献1)。

 また、DKAが1型糖尿病の初発症状のこともある。特に、1型糖尿病の新しい亜型(サブタイプ)として最近注目されている「劇症1型糖尿病」は、急性発症1型糖尿病の約20%を占め、発熱、消化器症状で発症し数日間の経過でDKAに陥る。1日でも診断が遅れると生命が危険となる病態であり、臨床上重要である。以下、当院で経験した劇症1型糖尿病症例を提示する(参考文献2)。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター内科副部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。研修後、成田赤十字病院などを経て、2002年4月より現職。

連載の紹介

【臨床講座】誰にも聞けない糖尿病の基礎
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