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連載第10回
慢性合併症診療のポイント-網膜症編

2006/06/16

【質問】
網膜症の発症・進展を防ぐには、どのような点に気を付ければよいですか。
【回答】
初診患者は、全例、眼科受診を忘れずに。その後の定期的な眼科受診も重要。

 今回から3回に分けて、糖尿病の三大合併症とされる網膜症、腎症、神経障害の早期診断・検査・治療のポイントについて解説する。今回は網膜症を取り上げる。

糖尿病が原因の失明は年間約4000人
 成人の失明原因の第1位は糖尿病性網膜症であり、年間約4000人が失明していると推定される。2型糖尿病患者では発病時期が不明なため、初診時は必ず眼科専門医に紹介して、眼底検査を受けてもらうようにする。なお、人間ドックなどで行っている無散瞳眼底カメラでは、眼底の一部分しか撮影できないため、眼科医による散瞳した状態での診察が必須である。

 厚生労働省研究班の2002年度糖尿病実態調査によると、糖尿病と診断された患者のうち眼底検査を受けている人の割合は、男性で69.0%、女性で70.8%であり、糖尿病患者の約30%は眼科を受診していないことになる。また、眼科を初診した患者のその後の眼科受診状況の調査研究では、眼科初診の5年後に再度眼科を受診していた患者は43.8%と報告されている(参考文献1)。つまり、半数以上の患者が眼科受診を中断していることになる。

 これらの結果を踏まえると、内科医は糖尿病患者の眼科受診に遅れや中断がないか、常に注意を払う必要がある。内科医と眼科医との診療連携には、日本糖尿病眼学会が発行している「糖尿病眼手帳」を活用するとよい(※)。

治療開始時、3~6カ月後に検眼
 網膜症は、(1)正常期、(2)単純網膜症期、(3)増殖前網膜症期、(4)増殖網膜症期――の4期に分類される。「糖尿病治療ガイド2006-2007」(日本糖尿病学会編)では、眼科の受診間隔は以下を推奨している。また、2型糖尿病患者の場合、発症時期が不明であることから、治療開始前および3カ月、6カ月後に検眼することが望ましいと記載している。

・正常から単純網膜症の初期まで:1年に1回
・単純網膜症の中期以降:3~6カ月に1回
・増殖前網膜症以降:1~2カ月に1回

 (1)と(2)では、良好な血糖コントロール、高血圧の治療など内科的治療が重要である。(3)以降は眼科医による治療が必須である。(3)と早期の(4)では、失明予防の観点から光凝固療法を行うことによって、網膜症の進行を阻止、または遅らせることができる。硝子体出血と網膜剥離には硝子体手術が適応となるが、高度な技術が必要であり、同手術を施行できる施設・眼科医は限られている。
 
 2型糖尿病患者を対象としたKumamoto studyによれば、網膜症と腎症の発症・進行を防止するためには、HbA1c6.5%未満、空腹時血糖110mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満を維持する必要がある(表1、参考文献2)。

著者プロフィール

岩岡 秀明(船橋市立医療センター内科副部長)●いわおか ひであき氏。1981年千葉大卒後、同大第二内科入局。研修後、成田赤十字病院などを経て、2002年4月より現職。

連載の紹介

【臨床講座】誰にも聞けない糖尿病の基礎
糖尿病患者は増加の一途をたどっています。経口糖尿薬は何を選択すればいいか?インスリンはいつ導入すべきか?合併症を防ぐためのポイントは?教科書では分からない糖尿病診療の基本やコツを紹介します。

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